本日はかるーい話を。
今まで「自分で金箔を購入したことがある」という方はこの記事を読まれている方でどれくらいいらっしゃるでしょう?こう書くブログ主は一応日本でも、ベルギーでも何度か金箔を購入しています。
日本とベルギー(というかヨーロッパ)の箔の両者におけるぱっと見の相違というのがあります。それは売られている形状として、日本の場合はサンドウィッチのように「フリー状態の紙」の間に「箔」が挟まっているのですが、ベルギーの場合は「冊子状の紙」に「箔」が挟まっています。実際両者を使ってみるとわかりますが、「出して、片付ける」が楽なのが「冊子型」、実際に使うときに「どこまで箔をつかったっけ?」と探さなくて楽なのが「フリー状態の紙(日本タイプ)」となります。
また、日本の箔の場合は最小でも11cm四方角の大きさです。加えてこれよりも大きいサイズが3種控えています。これに対しベルギーの場合はおおよそ8.5cm四方角に限定されています。そういう意味ではベルギーサイズは小回りが利くといいますか、小さいサイズに切って使う分には使いやすいサイズなのかもしれません。というか、冊子に挟まっているので、箔のサイズが大きいと何かと使いにくいのかもしれません。私は箔を小さく切って使用してきましたので、「大判」がよい!という良さをいまいちお伝えできなくて申し訳ないですが、多分長い距離において「継ぎ目」を出したくないとかの場合は「大判」のほうがよいはずです(ただ、大判をむりなく使える技術が必須となりますが…。滝汗)。
ほか日本の場合は、大きく「断切」(大量生産型)か「縁付」(伝統的なもの)かから始まり、金と銀と銅の配合率によって色々選ぶことができます。この時のパッケージとして少量の10枚入りのものか、100枚入りのものでも選択することができます(ただし選択した種類によっては100枚入りはなかったような気もしますが、単に売り切れだったのかもしれません)。
これに対しベルギーの場合はというと、日本のような「断切」「縁付」のようなものはなく、パッケージとしても25枚入りのみ(少量だけほしいということはできない、ということです)。金と銀と銅の配合の違いで選択することができますが、日本と異なるのは「あかした」金箔も販売していることです。
「あかした金箔」とは?となるのですが、これは「金箔がフリー状態」ではなく、金箔を挟んでいる薄紙に金箔が貼りついたものをいいます。ベルギー(あるいはヨーロッパ)だけの技法かというとそうではなくて、普通に日本画の技法としても存在します。とはいえ、「あかした状態」で販売されているのはあるのかな…?という感じです。
私自身は日本画経験者ではないので、日本画の場合どういう場面で「あかした金箔」を使う必要性があるのか想像できず申し訳ないのですが、西洋絵画の場合は「フレスコ」など野外での制作あるいは修復の場面でこの「あかした金箔」を使用することが考えられます(実際私自身ベルギーでフレスコ修復を経験した際に、「あかした金箔」を使用した経験があります)。…日本で野外で金箔、というとそういえば金閣寺がありますが、もしかしたら金閣寺の金箔なんかは「あかした金箔」が使われているのかもしれません。
というのも、金箔を使ったことがある方だとわかると思うのですが、金箔というのは「風」のある場所だと簡単に飛んで行っちゃうので使いにくいのです。ですので極力風のない室内で使うことが前提です。それを「野外」で使う、「風のあるところで使う」場合、そもそもに紙の上に金箔が「フリー」だと、あっという間に飛んで行ってしまいます。実際フレスコ壁画修復をした身としては、言ってみれば工事現場の足場の上でする作業で金箔のひらひらを追いかけるのはものすごく危険なので、金箔にはじっとしていてほしいのです(苦笑)。ですので「冊子」の形状かつ、その冊子の紙に金箔がぴったり貼りついていてくれると、作業が非常に楽、というのを実感として感じておりました(なので「そういえば金閣寺!」と思ったのですが、日本画制作の場合でいかに使うのかは想像しにくいです。知っている方がいたら教えてほしいです。汗)。
ちなみに、金箔を使ったことがある方には「ほんと金箔って使いにくい!そんな【紙にくっついている、ふわふわと飛ばない箔】があるなら便利だからそっちを使いたい!」という方もいらっしゃるかと思います。でも【紙に貼りついていない金箔】のほうが主で、【あかした金箔】がおまけみたいなのは「美観的」に前者が美しいからです。金箔特有の艶、トロみ、光の反射加減みたいなものがありますので、近くによって観察できる「イーゼルペインティング(不動産と一体型ではない絵画)」には向かないんですね。逆説的にフレスコというのは画面として大きいので、何メートルも離れて鑑賞するものです(特に私が修復していたアールヌーヴォー建築の場合は車道の向こうから見るものでしたから)。こういう特性から、「イーゼルペインティングで使用する場合に金箔から得られる視覚的効果」ほどは求められていない、というというところからも「あかした金箔」でOK!という部分があるのだと思います。
なんでこのサイズ?なんでこの形状でこの素材が販売されているの?というのには、その国地域の伝統技法などに基づくものがあるのかなと思います。場合によっては、過去記事にちらっと書きましたとおり、ドイツでの箔生産の壊滅で日本の箔がドイツ進出をしている過去がありますので、現在のドイツあるいはヨーロッパにおける箔生産が完全に本来の伝統にのっとったものなのかは不明とかだったりもしますが。それでも独特の「冊子型」で金箔を販売しているのには、その地方のこだわりがあるからだと思うんですよね。
こういう「どういう形状、どういう大きさ」で販売されているのかというのも、作品を知る上で面白く、場合によっては修復やその作品の価値を知る上で大事なことになるので興味深く思います。
というわけで本日はここまで。軽く、と思いましたが思いの他長くなりブログ主本人が一番びっくりしております。当記事を最後まで読んで下さりありがとうございます。
#金箔 #技法材料 #文化財保存修復 #油絵保存修復
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