金箔のお話⑫:日本での立体物での使用方法・技法

Uncategorized

前回は日本の伝統的な平面上での金箔の使用方法・技法のお話を簡単にしました。

本日は日本の伝統的な立体物に対する金箔の使用方法・技法についてお話ししようと思います。ただし私の専門は油絵保存修復の専門ですので、いっぱいなにかを知っているわけではありません。ですのでこういうブログは彫刻や工芸の専門の方に質問したり、自分自身でより深く調査する足がかり的に使っていただけたらなと思います。

加えて私のブログはどうも学生さんが読んでいるのかな?という雰囲気があるのですが、こういうブログはほんとレポートとか論文とかの資料には全然ならないので、使わないようにお願いしますね。こういうブログも足がかりでしかなく、「こういう話って本当?」くらいに自分でいろんな資料(本とか論文とか)を読んで確認してくださいね。

というわけで以下から本題。

平面物に対して立体物、例えば彫刻、仏壇、お盆、お椀みたいなものですね、日本におけるこういう木が素地のもの(木が基底材のもの)へ金箔を張り付ける場合は「漆」を用いることが多いようです。また「これも立体物?」という例にはなりますが、金閣寺や神社の建物自体に用いられている金箔の接着には漆が使用されているそうです。

こう書くとなんで接着剤の使い分けをするんだろうという疑問もでてきます。これはあくまでも日本画や日本の彫刻技術を専門としていない人間が想定することですので、足りないことなどもあるとは思いますがそれを前提で読んで下さい。接着剤に限らず、人が何かを使用するときはその素材の「利点」と「欠点」を天秤にかけて使うと思います。いかなる時にも「瞬間接着剤」を使うわけでもなく、かといっていかなるときにも「スティック糊」が正解ではないように、日常生活でのふとした「接着」でも人は「なんらかの利点と欠点」を無意識に考えて使っているはずです(その中では、「家にたまたまなかったから」とか「お高いから」とかも勿論含まれます)。

で、(日本の)立体物、例えば仏壇、お盆やお重やお椀、金閣寺に神社あたりの金箔貼りに「膠」を使わない、あるいはあえて漆を使う理由はなんだろうと思うと、「固着の強さ」と「堅牢性」と「美観」かな、と。接着剤というのは接着が強ければ強いほどいいわけではなく、求めに応じた接着力があることが最良ですよね。その上で紙や布、特に「巻く」ような場合に求められる「しなやかさ」や「厚みとしての薄さ」みたいな接着の仕方は、「野外(風、雨、雪などにさらされる)」「使用後に洗う(水に付ける)」「から拭きであろうとお勤めとして毎朝拭く可能性がある」みたいなものには接着力としても堅牢性としても「弱い」のかもしれません。

また美観としても漆は「赤い漆」と「黒い漆」がありまして、使用する箔によってこの漆の使用を変えます。そうすると経年やなんらかの理由で箔が剥離しても、美観としてある程度の美しさを保つことができるためです。神社などで金箔なり銀箔なりが剥がれているのを見ることができますが、その下に赤い層あるいは黒い層が見つけられるのはこれが理由です。また逆説的に紙や布の上での描写ではこのような「接着成分」の色が、美観としては邪魔になることもあるでしょう。なにせ「膠」はわずかに黄色味がかっているとはいえ、透明な液体ですから、そういう意味合いで美観の邪魔にはならない素材だからです。

なお。私が知る限りではありますが西洋では見ない日本の彫刻などの立体物に施される独特の金箔技法に「切金」があります。文字通り「カッティングした箔で模様を作る技法」なのですが、これが全然簡単ではないわけです。

そもそもに箔1枚のみで「切金」は無理ゲーすぎるので(含有する銀の率が上がるとやりやすいですが、金の良さがなくなってしまうので…)、箔を2~3枚重ねて熱圧着させるところから技法はスタートします。このように箔を重ねたからと「楽々ちん」にできる技法ではないことも付け加え(汗)。

私自身は「切金」に詳しいわけではないのですが、一般的には細いライン模様や幾何学的な模様をこれで作るのかな。「えっ、幾何学模様?キャラ弁みたいに特定のキャラを細かく描くわけじゃないならラクショーじゃん!」と思われそうですが、金箔は破れやすく、切りにくく、扱いにくい(さらには手指で触らずに作業することが求められる)ので、なかなかそう簡単ではないんですよね…(ああ、でも同じく、破れやすく、切りにくい海苔を普段キャラ弁のためにカットしている方々は上手にできるのかしら??)。西洋の場合、こういう模様付けの時に楽に実施できる方法があるためか、こういう「切金」技法の話を聞いたことがないのですが、果たしてどうなのでしょう。

このような感じで、どのような基底材の上での表現なのか、どのように使用されるのか、どのような場所で保存されるのかなどによって使用される材料などが異なることが想像できるでしょう。また、伝統的な素材ほどその土地で採れたり流通しているものを使用するわけですので、伝統的にそういう「材料が得られる土地」であるということもわかります。逆説的にヨーロッパではもともと漆が取れたり流通していないからこそ、伝統的に使用していないので。

こういう風に素材や使い方、同じ国の文化財の中でも接着素材が違う理由などを考えてみると興味深いですよね。また同時にそもそもに「金」や「銀」を「箔状」にすること自体が多変なのに、そういう形に変化させて使うことが異なる国、異なる文化で同じって面白いなぁと思ったり。

ということで本日すでに大分長くなりました。最後まで当記事を読んで下さり、ありがとうございます。ではでは、また~。

コメント

タイトルとURLをコピーしました