2023年2月20日にネットニュースにて表題通りのニュースが入ってきました。
参照ニュース各種(世界的に有名な彫刻「バルーン・ドッグ」が粉々に。来場者がうっかり倒してしまう (msn.com)、Iconic Jeff Koons ‘balloon dog’ sculpture broken at Art Wynwood – CNN Style、など。外部リンクですので自己責任でご覧ください)
陶器製の彫刻(一見風船を膨らませ、捩じって作る犬のように見える)の青バージョンが、美術館に来た鑑賞者の一人によって壊されてしまったようです。
上記に書きましたとおり、この作品は一見、道や商業スペースなどで大道芸人さんのような方が風船で簡単(そうに見える形で)作ってくださる犬の形にそっくりです(勿論大きさは風船サイズではありませんが)。ですので、どうも鑑賞者の方が「風船でできているのか…?」と確かめたくなったらしい…んですね。
実際作品をご覧になると、そういう気持ちはわからなくもない…と共感される部分もきっとでてくるだろうとは思うのですが(^^;)。
ヨーロッパをはじめ西洋の美術館の場合、「この作品、剥き出しで展示するの?!」ってくらい、結構無防備であることは多々あります(とはいえ最近の環境関連団体の活動のことなども踏まえ、色々対策はしているとは思いますが)。特に現代美術なんかは展示ケースなどに入っていない、露出展示であることが殆どのように思われ、結構ドキドキしておりました。
でも、ヨーロッパの場合なんかは幼少の頃より学校なんかが何回も授業の一環として美術館に連れて行って、鑑賞の仕方なんかを教えていると思うんですよね…。あるいは、少なくとも日本人であり、日本で育ったブログ主ですら、就学前に美術館デビューしましたが、その際に親に鑑賞の仕方を教えられて育ちました。少なくとも、展示されている作品に触ることの恐れ多さというのもを感じて育ってきた気がします。
それが、こんなに気楽に(?)触ってしまう…。しかも一般的に作品は台座の中央に鎮座しているはずですので、少し触った程度では台座から落ちるわけがない(しかも陶器製なので重いはずですのでなおさらに)。ですので、結構な力で押した、持ち上げようとした?ということがなければ、こんなことはないんですよね…と思うとすごくびっくりしています…。
日本でも修学旅行中の中学生が美術館の作品を壊してしまったことがありました。幸い作者がご存命の方な上、非常に寛大な心で許容されており、大きなことにはなりませんでしたが、このときも正直「美術館の展示物を触ってはいけないと学んでいない」ということ、および「美術館の展示物への敬意を持っていない」ということに非常に驚いたものです。
私自身が文化財保存修復という専門を学び始めて、初めて作品に触ったとき。あるいは私が大学で教鞭をとっていた際に文化財保存修復で学ぶ学生が初めて作品に触るとき。どちらも同じだけの「恐怖」がありました。「自分が触ることで、逆に何かあったら…?!」という怖さ。それが当たり前のものだと私は思っていました。
少なくとも最近はそうではないんだなと学びました。それは日本だけの話ではなくて、世界規模でそうなんだなぁと、びっくりもしましたし、「自分がそう思うから、周りもそう思っている」わけではないんだなぁとも思いました。当たり前のことではあるんですけどね。個人的には残念ではあるんですけど。
多分、作品に触って壊しちゃった方自身も驚いたでしょうね。実際英語版のニュースをご覧になるとお分かりになるのですが、作品の壊れ方が半端じゃないですし、自宅でお皿一枚割れても結構ショックなのに美術館の作品がこんな壊れ方をしたら、パニックにもなったかもしれませんね。
こういう状態になった彫刻の修復の処置メンバーの一員をしたことがありますので、こういう壊れ方をしても「きっと修復することはできるだろう」とは推察するのです。しかし、そうじゃないんだよ、ということを壊した方に重々学んでいただきたいですし、こういう繰り返しのないよう、展示作品に触れることのないでいただけたらなぁと思います。作品によってはものすごく触りたい欲求を催させるものもあるとは共感しますけど、それと「触ってもいい」というのは違うので…。
こういうことって、ネットみたいなものがなかったブログ主が子供のころも起こっていたけど、現代のように世界にあっとう間に知られない状態だったからわからないだけだったんでしょうか?それとも「美術作品」「文化財」の価値が、一般からするとかつてより「軽い」ものとなってしまっているのでしょうか。
作品が陶器製であっただけに、現場にいなかった癖に物の割れる大きな音が聞こえるような気がして、心臓がばくばくするようなニュースでした。作品が無事修復されますように。いろんな方面において、影響が小さい形で収まるといいなぁと願います。
コメント