毎度毎度同じシリーズ内で同じ文言を繰り返してはおりますが、前置きとしまして、この用語シリーズはブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となります。西洋絵画を構成する素材の一つである絵具を理解する足がかりの一つとして記事にしております。ただ、もし文化財保存修復を学びたいなーという方が読まれている場合は、こういう記事のみをうのみにするのではなくて、いろんな文献を比較参照してくださいね(^^)。
また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分、あるいはわかりにくいがあります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。顔料や絵具に関しましては、現在やっている【用語】シリーズに関わらず、すでに過去の記事で何度か書いている部分もありますので、そちらもご覧いただけるとわかりよいのかな…と思いつつおります。
本日も前回の記事に引き続きコロファンに関して。本日の記事は続きですので、もし気になられましたら前回の記事を先に読んでいただけますと幸いです。
というわけで本日の記事をどうぞ。
プリントの本文:結合剤と希釈材22:ディテルペン:コロファン2
- コロファンには一連の欠点があるが、しかしながらこの良質ではない樹脂は少なくとも北部において、過去においてはとりわけ使用されていたようだ
- コロファンは古いワニスや樹脂酸銅の中で幾度も特定された
- コロファンは日光にさらすだけでべとついてしまうほど低い融点を持つ
- コロファンの酸化への敏感さは、早期の褐色化や粉末化を引き起こす
- コロファンは高い酸性を示すことから、塩基性の顔料やセルロース繊維にとって危険をはらむ
- コロファンの高い溶剤保持力によって、塗膜の乾燥が難しくなり、これによって長期間べたついた状態となる
プリント本文
La colophane présente une série de défauts, mais il semble néanmoins que ce soit cette mauvaise résine qui ait été surtout utilisée dans le passe, du moins au Nord. Elle a été identifiée à plusieurs reprises dans des varnis anciens et desrésinates.
Elle présente un point de fusion bas qui la fait poisser par simple exposition au soleil.
Sa grande sensibilité à l’oxydation conduit rapidement à un brunissement et au farinage.
Son acidité élevée la rend dangereuse pour les pigments basiques et pour les fibres de cellulose.
Sa rétention de solvant élevé provoque un séchage difficile des films qui restent longtemps poisseux.
本日のまとめ
融点や、酸性とか、そういった事象が何に関係するのか!などと一般的には思われがちかと思います。
しかしあまりに低すぎる融点は、上記のとおり固形(固い塗膜状態)を保てないことで物理的に筆跡などがなにかとの接触などによってつぶれるなどの美観的問題が発生したり、べとつきのために埃などのよごれを集めてしまうことがあります。加えて、低すぎる融点を持つ素材からなる作品に対する処置は、非常に限定的になるので、処置する立場からすると難しいですね。
また、一般的に作品は酸性のものに長期的に触れると、酸化が進むので脆弱化しやすくなります。これが塩基性、つまりアルカリ性の物質に酸性のものを触れさせれば、当然「化学反応」が生じてしまうので、よいことはありません。
「作品自体が比較的脆弱で壊れやすい」と修復関係者が判断するのは、あくまでも例の一つではありますが、このようにそもそもの作品の構成素材同士の相性が悪く、ある素材が別の素材を攻撃する傾向があると、それを止めることができない、というのがあります。美術館博物館などがどれだけ環境を整備しても、そもそも先天的に「壊れやすい」のだから、「早期脆弱化」を多少緩和したとしても、結局は…というところがあります。
また、修復する立場で考えた際に、「絵画の修復関係であれば、絵が上手に描ければいい」ではないという理由もこういうところにありまして。そもそもに処置対象の作品を構成する素材への理解がなければ、こちらの処置によってより破壊する危険性というのがあります。なぜ物理や化学的な視点での十分な理解などが求められるのか、ということが、こういうお話で少しずつでもご理解いいたけるととてもよいなぁと思います。
というわけで本日は短めではありますがここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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