先の「絵画保存修復を学ぶ4:どこで学ぶ」にて、 「学ぶ学校次第ではなく、自分の頑張り次第ですよ」といいつつ、いろんな学校パターンの例を 出してみました。
その上で、「学校がどうこうしてくれる」ではなくて、「自分が卒業後こうなりたいという 夢に対してどうしたい」ということも踏まえて物事を決めていくのがよいですよ、 と思っています。 結局のところ、やっぱり「夢を叶えるか否かは、自分次第」ではあるのですが。
卒業後(修了後)にどうありたい?
例えばブログ主の例ですが、ブログ主は、就職氷河期の人なので、 本当に就職に関しては、厳しい状況でした(当時の就職成功率は5~6割と言われています)。 ですので「修了後にどこかに入り込むことはできない」と思っていました。 (それで東博に臨時職でも入り込めたのは奇跡でしかありませんが)
なので、修士の在学中に思っていたことは、「独立できないか」ということばかりでした。 正直その方法なんて全然わからないなかで、当時私が思う「独立」というのは 「自分で判断ができる」ということでした (経営とか、営業とか、そういうことは全て当時は頭になかったんですね。苦笑)。 修復を学ぶ前の皆さんが読むと、「そんだけのこと?!」と思いそうなものですが、 実際に修復を学んでいる最中に、きっと「自分で判断」できないことに、 びっくりすると思います。 それほど「判断」というのは責任が大きく、怖いことなのです。
「自分で判断できる」という目標はなかなかたどり着けず、結構長くくすぶることになるのですが、 海外に研修に出た際に、「何を軸に判断しているんだろう」というのを念頭に その機関のいろいろな方と一緒に仕事をしながら話をして、朧気ながら 自分に不足していたのはこれだったというのが見えて、そこで研修後に留学することに 決めたのです。 具体的に何が足りない、というものがわかると、結構目標への近道になるといいますか、 求めるものが手に入りやすくはなる気がします。 また、ブログ主の場合は、その「自分に不足していたもの」を補えることが最終的に できたことから、大学で教えるっていうことにも「えいやっ!」とチャレンジできた気が するんですね。
お伝えしたいこと、わかりますかね。
よく高校生、あるいは大学生でも持ちがちな「夢」として 「修復学科で学んで学芸員になる」というものがありますが、 正直「修復家」と「学芸員」は全く違う職業なので、そこが「??」というのは まず置いておいたとしても、具体的にその「夢」のために「どう」頑張るのでしょう?
「学芸員資格」を取得する?それは当然のことです。 しかし、それだけでは受け身でしかありません。 授業を受けて、きちんと納得できるレポートなり試験での点数をとれば 「学芸員資格」なんて、当たり前に取れるものですから。 そして、就活をする際に、学芸員資格なんて誰でも持っているものです。 学芸員になりたいなら。 そうしたら、何を売りに就活をするんでしょう? (おそらく、その「売り」として「修復がわかる」ということを考えての、「修復学科」に入学したいなのだと思いますが、それでは、「自分から何か行動しないのか?」と思いませんか? 独自性がないですよね? もっというと、「学部」はおろか「修士」を出ても、「修復がわかる」とは言えないはずですから…)
「他の人より何が自分はできる」とすれば、売り込みになりますか? あるいは、在学中に「特に何を習得したい」ですか? ここでまた「修復の知識と技術を」という曖昧な回答はやめましょう。 学校に行けば勝手に与えられること、受け身であればよいこと、ではなく、学校にいったら 「自分から具体的にかつ、能動的に何をするつもりか」を考えましょう。
加えて言うと、漫然と「学芸員になりたい」だけであった場合、「それになれなかったら?」と 思いませんか?
上記のブログ主の例の場合、具体的に「〇〇(職業名)になりたい」とは思っていませんが、 「こういうことができるようになりたい」と考えているわけです。 勿論「学芸員になりたい」という考え方で、得られるものがないわけではありません。 そこは誤解なきように、ですが。 「具体的に」「他者に判決が委ねられるようなものではなく」 「自分で自分の成長が確認できる」そんな目標があると、 いろんなことに繋がっていくかもしれないよと思いつつおります。
そういった、学校に行って「〇〇を絶対身につける」「こういうことがしたい」があれば、 行くべき学校も容易に決まります。
保存修復に関して、受験などをする前に、必ず『本』を読もう
そもそも、まだなんらかの学校に行って、保存修復について学んでいないのに、 「具体的に何を習得したいか」を考えるなんて、無理だよ、と思われるかと推察しております。 でもそう言っちゃうってことは、「イメージ」先行であって 「行きたい専攻(学科、職業)の実際」を知らなすぎる現実があるのね。
子育て話にあるのですが、小学生くらいのおこさまが、「どうしても犬を飼いたい」と 頑張るので、そのお母さまがどう対応したかというと、「犬を飼うときに、 どういうことをしなければならないか、調べて、その上で、自分でできるか考えてごらん」と 言ったそうです。 そのお子様は、図書館に通い、時には司書さんにどんな本を読めばいいかを尋ね、また、 たまたまその司書さんのお知り合いにペットショップ関係者がいたそうで、そういう業者さんに 直にインタビューをして、「飼い方だけでなく、興味本位で買われて最終的に捨てられる犬」の 話も伺ったりしたそう。
上記のたとえ話の結果として、最終的に犬を飼ったか否かまでは存じ上げませんが。 犬を初めて飼う人に対し、飼う前に犬の飼い方を学びましょうとはよくいわれていることです。 いはんや、学校を選ぶ、学科を選ぶような時なんかもそうで、学校生活の4年間や、 その後の将来がかかってくるのならば、不透明な学科ほど前もって『本』で 学んでおくべきだと思っています。 「絵画の修復に関わりたいな」と考える人が思うほど、 「絵が描ける人がなれる」仕事ではないです。 「絵を描くのが好き」なら、違う学科・職業を選んだほうが、 各段に幸せになれると思っています。 絵画の保存修復の仕事は、「作品の上に、修復家が絵を描く仕事」では決してないためです。
具体的にどういうことをしている職業なのか、どういうことを学ぶ学科なのか、本を読み、 その上で理解できないこと、不安なことなどは、大学のオープンキャンパスなどを利用して、 自分が理解できるまで、在学中の学生さんや教員に質問してみましょう。 オープンキャンパスは、入学に関して困りごとのある学生さんが、大手を振って質問を可能にする為のシステムなのですから、それを利用しないのは勿体ないです。学科や学校自体の選択に悩むなら尚更。
でも、実際質問って、「ゼロ」からは出ないのです。なんらかを自ら学んで、 「理解できないな」とか「この本と、さっきの本って言うこと違わない?」みたいな形で、 自ら動くことで初めてでてくるのが「質問・疑問」なんです。
何度も言いますが、調べものをする際は、ネットではなく「本」(報告書、紀要など含む)で お願いします。
学校時代は非常に大切な時間だからこそ、受動的ではなく能動的であってほしいですし、 だからこそ「到達目標」のようなものがあると、学生生活を悔いなくいられると 思っているんですよね…。
本日のまとめ
非常に端的にまとめてしまうと、学校にいく、授業をうける、という受動的な態度で 得られるものではなく、自分で自ら能動的に動くことで、具体的に 「何ができるようになりたいか」を考えて頂けていただけたら、 自分のその「やりたいこと」に合致した学校も決めやすくなるかと思いますし、 実際の学校生活も有意義なものになるかと思います
また、「何ができるようになりたい」といった具体的なことが思い浮かばない場合は、 「自分は就きたい職業について、よくわかっていないんだ」と思って いただき、改めて『本』(報告書、紀要なども含む)で調べてみてほしく 思います。 オープンキャンパスなどで、諸先輩や教員と有意義な会話・質疑応答を実施するためにも、 事前に是非是非本を、読んでいただけたらと思います。
大分長くなりましたが、最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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