文化財保存修復におけるカメラ:なぜスマホでの撮影は適切ではないの?

修復を学ぶ

先の記事にてどうしてカメラのお話をするのかといった概要のお話をしましたので、ここから少しずつカメラの話、とくに最初にアナログカメラに関してお話していきます。

さて、とはいえブログ主は別段カメラの専門家ではありませんので、アナログカメラの定義というのがもしかしたらカメラの専門家とは違うのかもしれませんが、ここではフィルムが入っているものをそういうものと考えて説明します。また、カメラの専門家ではないのでプロの方から見たら「何いうてんねん」という内容がありましたら、色々教えていただけるとありがたいです(ぺこり)。

というわけで初めていくのですが、なぜフィルムの話が必要になるかというと、アナログカメラの場合、カメラの大きさなどによってフィムルの大きさが違い、それが画像の情報量が違いであったため、フィルムが大きいものほど当然資料としてよいと認識されているためです。

例えば、私が子供のころのご家庭のカメラは、たとえ一眼のものであれ、一般的に小型カメラに類していたと思います。この小型カメラ用のフィルムはロール状でかつワンショット分のフィルムの大きさが24㎜×36㎜のものでした。この縦の長さが35㎜であることからこの小型カメラ用ロールフィルムは35㎜フィルムと呼ばれていました。最近人気が復活している「写るんです」というフィルム入り簡易的カメラをご存知ですか?私たちブログ主世代が中学生、高校生のころにはやった使い捨てカメラですが、最近また若い人に人気らしいですね。こういった使い捨てカメラも、35㎜カメラに相当します。   

対して、同じロール状フィルムでも中型カメラになるとブローニー版というフィルムを使っていました。このカメラのフィルムもロール状ですが、ワンショット分のフィルムの大きさが6㎝×6㎝であることから、通称ロクロクといわれていました。私が某国立大学大学院の文化財の学生のときに使っていたカメラの一つがこのブローニー版です(さらにちなむと、このブローニー版では白黒フィルムを使用して撮影していたため、フィルムの現像から紙焼きまでやっておりました)。このフィルムの大きさの段階で、ご家庭用のカメラのフィルムと比較して、フィルムの情報量が「3600:864」とブローニー版のほうが4倍以上あることとなります。  

さらに大型カメラになりますと、某国立大学院大学では、カメラは通常シノゴと呼ばれる4インチ×5インチのシートフィルムを使っていましたが、本来美術館用に用いてほしいカメラとして8インチ×10インチのフィルムを使うカメラが存在していました。

なお、親切にも具体的に35㎜カメラのフィルム、ロクロク、シノゴのフィルムの大きさの違いを示してくれている図がありましたので、よろしければ他のサイトですがご覧ください(【フィルム豆知識】 写真フィルムの種類とその違いって? – 写真 デジタル化・スキャンの高品質サービス|スマイル・シェアリング株式会社 (smile-sharing.co.jp))。フィルムのサイズの違いに結構驚かれるとは思うのですが、フィルム自体の大きさが異なると、資料の情報量がそもそも全然違うよというのが明確にわかってもらえるかなと思います。   

さて、なぜ今となっては皆さんが使わないフィルムの話を最初にしているかというと、そもそも写真の画質の良しあしは画素数に関係していると思われがちなのですが、実は撮像素子(イメージセンサー)が大きいほど高画質に撮影することができます。   

撮像素子(イメージセンサー)なんて突然出てきた言葉ですが、これはレンズに映った画像(つまり光)をデジタル信号に変換する部分…簡単にいうとフィルムの役割で、これが大きいほど高画質な写真が撮影できます。いわばデジカメで一番大事な部分でもありますし、先にフィルムの大きさの違いが情報の違い…とお伝えした理由でもあります。

ですので撮像素子(イメージセンサー)の大きさや性能の良さによってデジカメの価格も高くなります。  

ちなみにデジカメの35ミリフィルム型の撮像素子はとても大きく、高画質撮影、低ノイズ撮影が可能。デジタルカメラが普及する前のいわゆる35㎜判フィルムと同等の大きさです。

この大きさの撮像素子を搭載したデジタル一眼レフカメラはハイアマチュアやプロ仕様のものが多く、値段も数十万円するものばかりです。超高画質でボケにくく暗闇にも強いあこがれのカメラです。

これに対しAPS-Cサイズとは、中級機や入門機で主にでまわっている一眼レフカメラの撮像素子です。35㎜判と比べると小さいですが、これでもかなりの高画質で撮影できる。多くのミラーレス一眼カメラもこの撮像素子を採用しています。Canonやニコン、ソニーなど多くのミラーレス一眼カメラもこのサイズの撮像素子を採用されているそうです。

さらにフォーサーズ・マイクロフォーサーズとは、オリンパスやパナソニックなどから発売されているマイクロ一眼・ミラーレス一眼カメラに使われている撮像素子をいいます。オリンパスやパナソニックのミラーレス一眼カメラの撮像素子はこのくらいのものが多い模様。

そして1~3万程度で売っている一般的なコンパクトデジカメや携帯・スマートフォンのカメラなどに使われている撮像素子は1/2、5型サイズといいます。同じ画素数でも撮像素子が大きいほど高画質になるということを考えれば、記録という意味では便利なカメラ付きケータイ(スマートフォン)も、高画質な作品を撮影する上では不向きとなります。

世の中、どんなものでもお仕事用の専門の道具を使うとは思うのですが、文化財保存修復における「撮影」でも、スマホでは本来の目的を果たすには不十分で、適切な役割は果たせないんだ、ということをご理解いただけたらと思います。

これは実際に文化財保存修復、あるいは展覧会の図録のための絵画作品の写真撮影でも同様かと思いますが、実際に絵画作品を撮影する経験をすると「スマホなんかじゃ無理!」ということは痛感できることかと思います。実際きちんと絵画作品を適正に撮影しようと思うと、ものすごく時間がかかります。色々気を遣う部分が多くて…。「あとでちゃちゃっと補正すればいいじゃん」ではないもの(そしてそれができない部分だったりする)ので、実際に絵画の撮影をしてみるとわかるのですが、とてもじゃないですけどスマホでは撮影できません…。勿論、部分的にメモ程度に写真をとる程度には使えますけどね(^^;)。

ということで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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