文化財保存修復におけるカメラの話:ISO値

修復を学ぶ

2つ前の記事にてどうしてカメラのお話をするのかといった概要のお話をしました。また、直近の記事から少しずつカメラの話をしております。その上で本日は撮影において色々理解しておく必要性のある用語の一つISO値についてお話します。

とはいえブログ主は別段カメラの専門家ではありません。もしかしたらカメラの専門家の方から見たら「何いうてんねん」という内容があるかもしれません(汗)。もしそういうのがあるよ~とお気づきの方がいらっしゃったら、色々教えていただけるとありがたいです(ぺこり)。

というわけでここからが本題。

ISO値とは?

ISO感度とは、感光部が光を感じる感度のよさを数値化したものです。もっとわかりやすくいうと、「そのカメラ(あるいはフィルム)が光を捉える能力」を数値化したものです。

ブログ主世代にとっては懐かしいですが、もともとISO感度はフィルムの感度の規格でした。しかしデジタルカメラの感度にもこの値は使われています。

ちょっと脱線しまして、もともと「ものを見る」には何が必要かといいますと、過去の記事でも何度もお話していることですが、「光」と「もの」と「目(および脳)」です。「もの」とは被写体(つまり文化財保存修復でいえば作品)であり、目や脳は撮影においては「カメラ」です。最後に重要な「光」ですが、文化財保存修復の撮影においては「ライティング」をして撮影をするほうが一般的かと思いますが、「ライティング」はあくまでも「もの」に照射する光を適正であるように調整する方法です。さらにものを見るには、モノに照射した光が「目まで届く」必要性があり、また、その「届いた光」を「脳によって適正処理する」必要性があるわけです。「もの」に照射された光は、勿論「カメラ(目)」まで届きますが、カメラと「人間の目」は異なるので(人間の目は自動的に目に入ってきた光を適正処置しますが、カメラは撮影前に光への扱いを決める必要性がある)、色々カメラに付属するダイヤルで「ものから反射してきた光をどう扱う?」と決定する操作が求められます。

人間の目というのは非常に有能ですので、明るい光の中でも暗い中でも、別段人間が頭のどこかのネジをどうこうしてモードチェンジすることなく、ものを見ることができます。ありがたく、すばらしいことです。

だからこそですが、カメラの場合はそこに関してのモードチェンジは人間にしてもらわないとダメなんですね。暗いところでも光をいっぱい獲得できるよ!っていうモードと、十分な光の量のところで使ってね!というモード。

こういうのをフィルムあるいはデジタルの場合はISO値を変動させることで適正にするんですね。あ、とはいえ、「自分が目的とする撮影のためには周囲の光が少ないから(多いから)」というのを調整するのはISO値だけではないですけどね(それはまた別の記事で書きますので、是非見てみてください)。

ちなみにISO感度は数値化されていて、ISO100、ISO400というように数字で表現されます(これはフィルム時代から変わらないですね)。一般的にデジカメではISO100程度が最も低感度で(機種によってはISO80や50もあるもよう)、そこから200、400、800と数値は上がっていきます。なお高級機ではさらにきめ細かく設定できるようです。

ISOの数値が大きいほど光に対して高感度に撮影でき、機種によってはISO感度が10万超えという超高感度で撮影できるカメラも登場しています。

こんなすごいISO感度。なぜわざわざ低い数値を選ぶ選択肢があるのか?常に最大限に高いISO感度で撮影すればいいではないかと思うのが人情だ思います。しかし、世の中いかなるものにおいても、メリットだけのものってないようです。例えばISO感度においては、その数値があげればあげるほど写真上のノイズが多くなり画質が悪くなるという副作用があるため、画質にこだわりたい場合はISO感度の上げすぎは禁物です。例えば職業が探偵か何かで、暗闇で被写体の人物に気づかれずに写真を撮りたい、だからフラッシュなんかが使えない!という場合に、多少画像が荒れてもいいから「気づかれない」をメインに撮影するとなると、こういうISO感度が高ければ高いほどよい…ということになります。対して文化財保存修復においては、「文化財の情報を嘘偽りなく、誇張もなく、そのままに撮影できる必要性」があります。例えばノーマル写真などにおいては色彩なども正しく記録する必要があるため、荒れた画面の写真というのは「最大限高いISO感度で!」が求められることは殆どないと考えます。

こういう考え方から、私たちが文化財の撮影をするにおいてはISO感度を通常100として、画質をできるだけ下げないように努める必要性があります。

また、こういう考え方から、例えば暗い場所で光が殆ど望めない難しい撮影のケースにおいては、ISOを上げるのではなく、三脚を使用した上でシャッタースピードをゆっくりすると手振れなどを気にせず撮影することが可能になります。とはいえ中型カメラなど手で支えるには重いカメラを使用した撮影では、手だけでぶれずに支えるのは困難ですので三脚は必須です。

本日のまとめ的なもの

繰り返しになりますが、文化財保存修復における「撮影」というのは、「美しい写真を!」という「自分の作品」を制作しているのではなく、調査記録として作品の嘘偽りのない、誇張のない姿を撮る、ということが目的です。適正な資料を得る、ということですね。

そういう意味では「自分の世界観」を撮影するプロのカメラ関係者からするといろんな工夫の仕様がないのかもしれない反面、人間が撮影している限り全く主観が入らず、客観性だけで撮影できるものだろうか、という疑問も正直あります(「観る」という行為は非常に単純である反面、照射する光ひとつで「見え方」は簡単に変化するためです)。そういう「嘘偽りなく、誇張もない、作品そのものの在り方」というものを撮影することを極められるのはやはりプロのカメラ関係者なのだろうか、などとも自問自答したりもします。

記録のための撮影ですが、非常に奥が深いと思うんですよね…。ちゃんとやろうと思えば思うほどに。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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