文化財保存修復のための西洋絵画の歴史:レアリスムと印象主義、そして…

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事より、美術や絵画の発展の歴史について、ごくごく簡略的なお話ですが、書いております。また、美術史の順番どおりとしてまずギリシャ美術に関してや(ギリシャ美術続き①ギリシャ美術続き②)、ローマ美術(ローマ美術①ローマ美術②)、ロマネスクとゴシックおよび北方ルネサンスルネサンスマニエリスム、バロック美術(バロック①バロック②)、ロココ美術、あと新古典主義とロマン主義に関してすでに記載しております。

本日はレアリスムと印象主義について書いていきます。

なお、このシリーズの記事で常に同じに書いておりますが、当ブログでは美術史に関しごくごく簡略的なお話のみを書いていきます。あくまでもこういう記事を読むことで、当時の美術作品および西洋美術史などに興味を持ってただけたら嬉しいな、という記事であって直接研究やお勉強に役立つものではないとお考えください。

ですので詳細な美術史などを学びたいなどの場合は、いろんな文献などがでておりますので、是非そちらをご参照くださいませ(ぺこり)。

レアリスムとは

1789年のフランス革命以後、19世紀半ばまでに、パリにおいては王政を倒し、人民の権利と平等を手に入れることが目指されました。これにより、王侯貴族から政権を奪った新興市民階級は、自分たちの国家や文化を整えることを求めました。

19世紀という時代は、小さな権力を手にいれた人々が次第に美術の製作、流通、消費を支配していく過程とも言えます。美術においては、この過程は主題の世俗化という形で表れていきます。

レアリスムと呼ばれる美術運動は、社会を理想化せずに、現実をありのままに写実的に描こうとすることを指します。なので貧しい労働者などが力強く描かれているのが特徴です。この運動からイギリスのJ.コンスタブル、フランスのT.ルソー。G.ドービニーら外光派の風景画を介して印象主義へと続いていきます。 

印象主義とは

また、19世紀のフランスにおいて、一人の人間が画家を志すにおいて、さらに社会的な成功を目指すのであれば、その道は一つでした。

すなわち、まず世評の高い大家のアトリエに弟子入りし、基礎的な修行を積み、その後でパリにある国立美術学校に入学、その後学内の各種コンクールで好成績を修め、最終的には若手画家の登竜門であるローマ賞のコンクールで大賞を獲得する。さらに、そのコンクールで得た国費でイタリアに5年留学した上、帰国後はパリのサロンで作品を入選させて、一人前の画家として認知されるという方法です。

このように、美術学校、ローマ賞、サロン、アカデミーなどの制度は、19世紀フランスでは美術の体制内エリートを再生産する強力なシステムとして機能していました。

こうした制度と戦いながら、あるいは制度の枠外で絵画活動を行ったのが、クールベ、マネを始めとした印象派の画家たちでした。当時は「伝統、規範、訓練」が重要で、「個性、自由、創造」が重要視され始めるのは、美術の歴史においてはつい最近なのです。

この印象派の運動は、1870年代に興ったフランス近代絵画における、色彩の視覚的効果をそのままとらえようとする技法、態度、運動を指します。この運動の主要な特色は、色彩は光によって生まれるとの考え方に基づき、現実的な視覚効果を追求する点にあります。

また、19世紀においては、科学技術の成果で発達した写真技術が、美術に大きな影響を与えました。なぜなら、簡単で忠実な再現力という点で、絵画は写真にはかなわないためです。当時の画家たちは写真の脅威に怯えました。現実に、肖像画家の仕事は写真館に奪われますが、それは画家の存在意義にも関わる問題でした。

このような写真の発達とともに、「絵画」は写真にはできない絵画独自の特質や領域をことさら強調する方向に向かっていきます。       

本日のまとめ的なもの

印象主義以降は、現代美術史という授業でも網羅できないほどにいろんな派閥がありすぎるので、今回のシリーズではとりあえずここまでとします。

おおよそこのような形で西洋絵画は発展を遂げていきました。そして現代の我々において、西洋絵画、というと油絵と思うほどに、油彩画がメジャーな技法になっていったわけですが、実際のところ、厳密に油絵がいつ、どこで生まれたのかについては、明らかではありません(その技法が確立した時代はわかっていますが、「油」を「絵画」に使用した歴史の大元は不明、ってことね)。

また、同じ「油絵」と言っても、「北方ルネサンス」の頃に使われていた油絵具と、現代の我々が使用している市販の絵具では絵具に含まれる材料が違うだろうことなど、時代ごとの違いなどもある、ということを理解することも大事でしょう。

「なんでこんな描き方をしたのかな」というものの中には、時代背景としての「思想」というものもあれば、物理的に「絵具の素材としてこう描かざるを得なかった」ということもあります。

今回はあくまでもごくごく簡単に美術史に関して述べてみましたが、あくまでもこういうのをきっかけに(「面白いな」でも「そうじゃないだろ」でも)自分で調べてみてもらえるといいなと思っています。私自身、同じテーマみたいなことを日本で学んだ時と海外で学んだ時で印象が違う…などということは当然ありましたので、同じテーマでも、それをアウトプットする人間によって(あるいは語る際の視点の違いなどによって)得られる印象が違うなどということはあると思うのです。

あくまでもそういうきっかけとしてこういうブログを利用してもらえるとありがたいなと思います。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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