過去の記事にて、油彩画(テンペラ画含む)は、多くの場合複数の層構造からなるというお話をしました。
ここしばらくは、その多層構造の中でも「下地層(地塗り層)」についてお話しておりますが、特に直前の記事では「下地象(地塗り層)」の中でも「油性地」についてお話しております。
あれもこれも説明しないと、と上手にまとめられず、今回はその続きとなります。
「油性地」パート2ですね。
「色を担当するもの」と「接着成分」からなる「油性地」の、「色を担当するもの」に関するちょっとした詳細
一応おさらいとしては「水性地」の場合、そのおおざっぱな構成物質は「白色の体質顔料」+「白色の顔料(主に亜鉛華)」+「膠水」あるいは「白色の体質顔料」+「膠水」となります。
これに対して「油性地」は「色を担当するもの」+「乾性油あるいは加工乾性油」というところまではお話しました。
また、「色を担当するもの」として、「水性地」においては「白色の顔料」を主体にできないことはないが、通常主体は「白色の体質顔料」である旨をお話したのに対し、「油性地」に関しては「白色の体質顔料」を「色担当」の主体にすることはできない旨をごく簡単にのみ説明しました。
では「油性地」のおおざっぱな構成物質はどうなるかといいますと、「白色の顔料」+「乾性油あるいは加工乾性油」あるいは「白色の顔料」+「白色の体質顔料」+「乾性油あるいは加工乾性油」となります。
「色を担当するもの」に関して、「水性地」と変わらないじゃないかといわれればそうですが、入れる意味合いが変わります。
「水性地」の場合は、「色を担当するもの」に関して、「体質顔料」単体でも問題ない上で、顔料をいれてもいい、という状態。
これに対し「油性地」の場合は、「体質顔料」のみで、ということはできません。
各種油性地のレシピをみても、白色の顔料が主で、体質顔料は白色顔料の1割におさまる程度しか添加しないようです。
なぜかといいますと、油性地において体質顔料を入れる理由として考えられるのは「かさ増し」と「乾燥材」の役割です。
「色彩」としては求められていません。
で、「かさ増し」や「乾燥材」はあんまり入れすぎると作品にとってよいことはないので、粉体の中では1割程度に留めるのではないかなと推察しています。
油性地の「色を担当する物質」として使われる「顔料」とは?
では「油性地」の「色を担当する物質」として「顔料」は何を使うかというと「鉛白」を使う例がよく見受けられます。
「鉛白」とは油絵具における3大白色顔料の中でも、最も歴史が長く、使いよい顔料ではあるのですが、反面最大の問題点がありましてそれが毒性、という顔料です。
ですので、作業上、磨く・削るといった、作業場が鉛白の粉体が飛び散るというのは、作業者の体に毒ですのでやっちゃいけないのですけど、「油性地」の場合はその磨く・削るという作業がないので、毒性のある鉛白を使用したとしても作業者にとって問題がない、という点があります。
また、鉛白の良い点は、乾性油の固化を早めてくれるという点や堅牢さも挙げられます。
ただし、下地層の明るさを強調したいということが求められるなら、鉛白ではなくチタニウムホワイトを使ってみるのも面白いでしょう。
ただし、同じ白でも亜鉛華の使用はおすすめされていません。
亜鉛華がもともと遅乾燥性であることが作業性の悪さにつながるという考え方もあるでしょうが、亜鉛華の使用と剥離の関係性が文献上みられるからです。
とはいえ、あくまでもここは個人的なお悩みではあるのですが、この亜鉛華の使用と剥落の関係を考えた場合、数学の集合的な言い方をすると、亜鉛華を使った全ての作品サンプルが損傷しているわけではないんですね。当たり前ですけど。
で、実際ヨーロッパ留学をしている際に、この「亜鉛華と損傷」の関係を話題にしたことがあったのですが、その当時の先生に鼻であしらわれ(苦笑)。
日本で重要視されている度合と、少なくとも私が関わっていたよそ国での問題視の度合が(少なくともその当時は)全然異なっていて、もやもやしていたりしたんですよね(笑)。
だからこその個人的な結論としては、「亜鉛華」の添加で必ず壊れるとは言わないけれど、その危険性がゼロではない理解と、使用に対する不安があるなら使わないほうがよいよという感じで捉えようって、感じかなと思うのです。
亜鉛華使っていても丈夫な作品もいますから。
本日の簡単なまとめ:油性地はどのような物質から構成されている?
こういうことを踏まえまして、じゃあ最終的に「油性地」をおおまかではありますが、構成する物質は何か、といいますと「白色の顔料(鉛白)」+「乾性油あるいは加工乾性油」あるいは「白色の顔料(鉛白)」+「白色の体質顔料(乾燥剤やかさ増しとして)」+「乾性油あるいは加工乾性油」という形になります。
すでに大分長くなりましたので、水性地と油性地の特徴のまとめとともにエマルジョン地につきましては、まだ次回に。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
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