ここ連日、絵画(主に油彩画・テンペラ画)の構造についてお話しております中、直近の記事においては「下絵」および「絵画層」についてお話しました。
本日は前回の記事にてお話できなかった絵画層に関するお話を引き続きしていきたく思います。
絵具の「色を担当」する「顔料」などの分類の一部
前回の記事の中で、絵具層を構成する絵具は、油絵具の場合「色を担当する粉体(顔料あるいは体質顔料)」と「接着剤的な粘りのある液体(乾性油あるいは加工乾性油)」からなるということと、その中でも「顔料あるいは体質顔料」に関して、用語として色々分類できるというお話をしました。
加えて、前回の記事の中では、例えば「合成顔料」と「天然顔料」ということでお話をさせて頂きましたが、今回少しお話するのは「有機顔料」と「無機顔料」という分類です。
ブログ主は理系の人ではなく、文系の人ですので、理系の方からすると「それはちょっと違う!」という感じかもしれませんし、あくまでも絵具上の分類ですよということで非常におおざっぱな言い方をしますと、「有機顔料」と「無機顔料」の違いは、炭素が(C)が含まれる物質からなるか、あるいは炭素を含まない化合物からできているのか、という区分となります。
例えばですけど、最近のチューブ絵具はどうでしょうね、アイボリーブラックやボーンブラック、あるいはヴァインブラックやピーチブラックは、有機顔料のはずですが…。なぜなら、本来、アイボリーブラックは象牙を、ボーンブラックは動物の骨を焼いて炭にして、さらに細かく砕いたものだからです。
同じく、ヴァインブラックはブドウの枝を、そしてピーチブラックは桃の核を熱して炭にして、それを細かく砕いたものからなります。
ですので本当にこれらをこの通りの作り方で顔料にしている場合は「天然有機顔料」という形に分類ができるでしょうが、少なくとも、ピーチブラックだったかな、はアニリン黒からなる合成顔料だったりすることが多かったんじゃなかなかったかな。
まぁ、でも上記を見てみると、「全部黒ばかりじゃないですか!」と気づかれるかと思います。「炭化させて作る黒色」ですので、そりゃ「炭素(C)」が含まれるわねとご記憶頂けるとわかりやすいかと思います(^^)。
そうすると、「炭素(C)」を含む「有機顔料」は黒だけですか?というとそうではありません。もう一度先ほどの黒色顔料の素材を振り返ると、象牙、動物の骨、ブドウの枝、桃の核…と、生き物の何かからなることにお気づきいただけると思います。
ですので、他に生き物と関わりのある顔料を考えてみますと、例えば「茜」から採る「茜レーキ顔料」、「イカの墨」から採る「セピア」、染色でも有名な「藍」、虫から抽出する「コチニール」…などがあります。
ただこれらは、例えば「イカの墨」とか「藍」からも想像ができると思うのですが、これ自体が「顔料」になるのではなく、そういう「染色色素」を抽出して利用するという形で顔料となります。
上記は特に天然の素材から抽出するものですので、出来上がる絵具の色味が一定になるのも難しいですし、そもそもに抽出する上で量としての限度もあれば、抽出する上での面倒なども色々あるかと思います。簡単に言えば、「絵具に加工するための作業性の面倒」がいっぱいある素材だと考えるんですね。
だからでしょうが、特に戦後においては合成有機顔料は飛躍的に数が増えました。
現代において本当に絵具の色味は多くなりましたが、それらの絵具の「色味を担当する粉体(顔料あるいは体質顔料)」が、「天然無機顔料」、「合成無機顔料」、「天然有機顔料」そして「合成有機顔料」のいずれに当てはまるのかなどを分類してみるのもものすごく勉強になるので、気になるかたは是非挑戦してみてください(^^)。
本日のまとめ的なもの
こういった「色を担当する粉体(顔料あるいは体質顔料)」をまとめてペースト状にするために用いられるのが「接着剤的な粘性を持つ液体(油絵具の場合は乾性油あるいは加工乾性油)」ですが、これに関しては、また次回の記事にまわそうと思います。あまり長いシリーズにすると読むのも大変でしょうから、できるだけ簡単な記事にすること、頑張ります(^^;)。
前回今回と、「色を担当する粉体(顔料あるいは体質顔料)」を分類してみる一つの例を出してみましたが、他にも例えば色によって分けてみるとか、あるいは使用された年代で分けてみるとか、いろんな分け方があります。「顔料あるいは体質顔料」とはいえ、いろんな視点で「どういう物体かな?」と考えてみると、その物体自体に対して深い理解に至ったり、あるいは他の物質との兼ね合いでの理解に繋がったりと、脳みそのシナプスがつながるような感じがありますので、そういう感じでいろんな本をご覧になられるとよいかなと思います。
このブログの中でも、機会を見つけて同じテーマでも異なる視点で色々説明できたらいいなと考えています。
なかなかこういう話はマニアックで難しいとは思いますが、最後まで読んで下さり、ありがとうございます(^^)。
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