本日からしばらく、絵画保存修復関連の用語、特に顔料関係に関して記載していこうと思います。
なぜならば、最初にブログ主が絵画保存修復を学ぼうと思った頃、つまり日本の国立の某大学院を受験する際に、理解しなければならなかった用語の一部が顔料関係だったなぁということを思い出したため。
そして、さらに後にベルギーの王立の大学にて留学していた頃、1年生の時に最初の暗記要綱として出てきたのが顔料関係だったから、というのがあります。
勿論、過去の記事で何度も書いておりますとおり、絵画、特に油絵・テンペラ画というのは、非常に複雑な層構造からなっており(基底材、下膠、下地、地透層、下絵、絵画層、保護層)、絵具だけでできているわけではありません。
しかし、絵画という視覚芸術において絵具というのは非常に重要な役割をする素材であることから、まずここから理解を深めるということが、学びの上で興味の持続を可能とすると同時に、最終的にまた戻ってくるのも絵具関係だったりもするなぁと思うためです。
その上で、絵具というのが何からできているのかということを考えれば、これまた過去の記事で何度もご説明しておりますが、あくまで大まかにお話すれば、「色を表す」素材である「顔料」という粉体と、それらの粉体をまとめ、ペースト状にする「接着剤」的な役割をする素材である「結合剤」という2つの素材が最低限必要となります。
ですので、「絵具」に関わる話と申しましても、「顔料」のみの理解では十分なことではないんだ、ということもご理解いただけたらと思いますし、また、先ほど書きましたとおり、絵画は「絵具」だけからなるわけではありませんので、各層を構成する素材を理解することも非常に重要になることを念頭に、「まず」顔料、という気持ちで読み進めていただけたらと思います。
先に弁明的なものを…
その上で、今回はブログ主がベルギーの大学の授業にて頂いた資料(プリント)を翻訳する形(+必要な場合は多少説明を加える形)でのご説明になることを前もってお伝えしようと思います。
本当は、日本で出版されている本(翻訳本含む)複数および、こうした海外での授業の内容を全て網羅した上で、まとめたものを載せられたらと思いましたが、時間などの関係上難しくて(汗)。
なんていうんでしょうね。ブログ主自身、日本で基本的なことを学んでから海外留学をしているわけで、「同じことを繰り返して学ぶなんて」というような気持ちが当初なかったといえばウソになります。ですので、飛び級の算段などもした過去もあります(エキヴァランスの結果、叶いませんでしたが)。
ただ、実際現地で授業を受けると、学ぶものの何かが大きく違うわけではないのですが、」日本で学んだことをそのまま仏語訳して終了」ということができなかった記憶がありまして。
言葉でいうのは難しいのですが、日本で、大学院受験前に「読むこと必須」とされた本を、海外留学や仕事として絵画保存修復に向き合って再度読み返すと、「ああ」と思うような。
一つのものを、一つの角度から見るのではなくて、多少異なる角度から物を見るということって大事、という意味合いで(とはいえ用語説明なんて、どこの国でも同じ説明をするわけですが)、海外の大学ではどんな説明をしているかなということを知ることも面白いかなと思い、今回こういうことをしてみようと思っております旨、ご理解ください(同じような説明ばかりだと、思われるかもですが)。
ということで、以下からまず「概要の概要」のような説明を記載していきます。
顔料と染料の違いがある
顔料は無機、または有機の化学物質である。結合剤の中で、顔料はそれ自身が溶解せず、あくまでも微細な個体の粒子の形で「分散」の形態をとる。
これに対し染料は色のついた合成物で、色彩の溶解を可能とする任意の溶液に対し溶解性を見せる。染料から「顔料」を得るには、染料を吸収または沈殿により、不活性鉱物担体(アルミニウム、珪土、硫化塩、カルシウム、バリウム)に沈着させる。このように不活性レーキが得られる。
昔の絵画にて使用される顔料は、鉱物(鉱石、土)、植物(植物から抽出される染料)、または動物(動物界の抽出物による染料)由来のものである。昔の絵具に使われた顔料の粒子サイズは不均一であり、粒子の直径は数ミクロンから数十ミクロンまで様々に分散している。
これに対し現代の顔料の粒子サイズは均一なものとなっている。つまり顔料粒子の直径が一様であることを示している。これらの顔料は多かれ少なかれ丸みがあり、そして細かいもの(最大で数ミクロン)となっている。
本日のまとめ
先に書きましたとり、海外の大学の授業のプリントの翻訳となりますので、文章として固い感じがあったりする部分があります点、改めましてご了承のほどお願いします(ぺこり)。
で、今回原本の翻訳以外に詳細に説明を加えていないためもあるのですが、「翻訳だから」に限らず、説明が「簡素」であること、気づかれると思います。
おそらく当時の先生は、「最小限の知識として暗記・理解すべきこと」だから、最小限の説明を与えた(あんまりいっぱい説明があっても、覚えにくい、みたいな)のではないかなと思います。
ただ、大学1年生とかの段階って、理屈うんぬんとかの理解の前に、とにかく暗記しないと前に進まない部分がありますからしょうがないよね~と、同じく大学で教員をしていた身としては自分を振り返る部分もあります(^^;)。
翻訳の文章だけだとわかりにくいなぁとおもわれた場合、過去の記事でもすでに絵具や絵画層などのお話を書いておりますので、そういうものと複合して話を読まれてみると、少しはわかりよくなるかな…、そうだといいな…と願いつつおります(汗)。
というわけで本日はすでに長くなりましたので、ここまで。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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