毎度毎度同じシリーズ内で同じ文言を繰り返してはおりますが、前置きとしまして、この用語シリーズはブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となります。西洋絵画を構成する素材の一つである絵具を理解する足がかりの一つとして記事にしております。海外の大学のプリント(実際の現地語の文章付き)ですので、最低限どれほどの語学力が必要かや、あるいはどういう単語を頭に入れておく必要があるかなどの例にも利用できるかと思います。
また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分、あるいはわかりにくいがあります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。顔料や絵具に関しましては、現在やっている【用語】シリーズに関わらず、すでに過去の記事で何度か書いている部分もありますので、そちらもご覧いただけるとわかりよいのかな…と思いつつおります。
前の記事で結合剤・希釈剤の中でもプロチドとアルブミノイド関係は終わった!と思っていましたら、次のページにまだ続きがあるのを見つけましたので、本日はゼラチンや膠関係のお話を先に少々した上で、卵の話をする予定です。よろしくお願いします(汗)。
プリントの本文:結合剤と希釈材11:プロチドとアルブミノイド素材4
獣皮の膠は接着用の糊として大変良質である:
- 使用が容易な素材
- 大変多くの機能のある素材
- 接着用糊
- サイジング用糊
- 結合剤
- 粘着剤として
- コロイドプロテクター
- 良い経年、経年に対する良い耐性はあるが年とともに徐々に失われていく。湿気を含有する(しなやかさを失う理由の一つ)
プリントの本文:卵
卵
卵白:87%水、2%多糖類、12%たんぱく質(65%卵アルブミンー分子量4 4000)
タンパク質を得るために、膜を破棄するために卵白を攪拌する
個体のかすを取り除いた結果の液体は、成膜物質のように使われる
卵白の膜は大変脆く、それゆえにグリセリンのような可塑剤を加える。このような欠点(しなやかさのなさや経年による不溶性化)にも関わらず結合剤やワニスとしてよく用いられていた。
プリント本文
Les colles de peau sont de très bonnes colles d’encollage:
- matériaux faciles à mettre en oeuvre
- matériaux très polyvalents:
- colles d’encollage
- colles de collage
- liant
- agglutinant
- colloïdes protecteurs
- bon vieillissement, bonne résistance au temps mais perd progressivment, avec l’age, l’humidité qu’elle contient (une des causes de sa perte de souplesse).
L’oeuf
le blanc d’oeuf:
- 87% d’eau
- 2% polysaccharide
- 12% de protéines (65% ovalbumine – PM 44 000)
Pour recueillir les protéines, on bat le blanc d’oeuf de manière à rompre ses membranes. Le liquide résultant, débarrassé de ses résidus solides, est utilisé comme substance filmogène.
Le film de blanc d’oeuf est très cassant, d’où l’ajout d’un plastifiant comme la glycérine. Malgré ses défauts (manque de souplesse et insolubilisation au cours du vieillissement), il a été fort utilisé comme liant et comme vernis.
本日のまとめ
本日の記事の場合、膠と卵白の違いがわずかながら比較できて面白いですね(^^)。
膠は本当に古今東西、制作から修復まで多様に使用できる素材である反面、卵白に関する「使用」の話が「過去形」であることが興味深い部分ではあります。
ちなみに、卵白をワニスに使用していたのはヨーロッパでの、過去の話ですね。卵白は少なくとも現在の技術では可逆できない素材ですので、ワニスとして使用すると後年困る事態になります。(昔は可逆できない素材であることが理解されておらず、興味深いことに「一時的なワニス」として使用されていたりしました)
また、修復素材としても使われていて、その技術は非常に興味深いものである反面、その技術を保有している方はおそらく現在では殆ど残っていないと思われます(というのも、少なくとも私が知る、ヨーロッパのプロの方で、この技術を持つ方は2人いらっしゃったのですが、一方はすでに鬼籍に入っており、もう一方の方も年齢的に引退されているかもしれません…)。非常に残念なことではあるのですが、こういう古典技術に限って、実際技術を持つかたが技術を伝えてくれない傾向があり(秘伝として目の前で実施してくれなかったり、素材などの一部を公開していなかったり、文章として残していなかったり…)、その技術保有者が亡くなってしまうと同時に、技術ごと失われてしまうんですね…。
すでに鬼籍に入られてしまった技術者の方は、弟子をとらない方でしたが、なぜか私は模写技術に関してだけは多少は教えて頂けて、色々お話を伺うことができました。個人的に10年かけて育てたいとも言っていただけたのですが、実際ところ色々「大事な秘伝的な部分」に関してはシークレットだったり、色々思うところもあり、留学という選択をしたのですが…。「たられば」ですからね。卵白を使う技法は、一般的なものではなく、実際「いかなる作品にも使える方法」ではないのですが、それでも失われてしまうことが残念でしかないです。だれか、もう一人の古典技法を知る方から、うまく技術と知識を伝授されていてほしいなと思っていたりします(苦笑)。
そういう意味では個人的に研究してみると卵白は面白い素材かと思います(昨年末から急に卵の価格が急上昇しているので、そういう意味では研究のためにじゃんじゃか購入するのはためらわれるかもですけど。苦笑)。
というわけで本日はここまで。最後までご覧くださりありがとうございます。
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