【用語】絵具に関する概要(ベルギーの大学での授業Ver.32):結合剤と希釈材12:卵2 とエマルション

用語

毎度毎度同じシリーズ内で同じ文言を繰り返してはおりますが、前置きとしまして、この用語シリーズはブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となります。西洋絵画を構成する素材の一つである絵具を理解する足がかりの一つとして記事にしております。日本の大学で習うこと(重要視されること)と当然全く同じ部分もあれば、異なる部分に注視していることもあります。そういう違いを単純に面白く感じてもらえればとも思いますし、同時に「なぜ」そういう部分に注目しているのかを考えるのは勉強になるとも思います。

また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分、あるいはわかりにくいがあります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。顔料や絵具に関しましては、現在やっている【用語】シリーズに関わらず、すでに過去の記事で何度か書いている部分もありますので、そちらもご覧いただけるとわかりよいのかな…と思いつつおります。

本日は前回の記事で卵白を説明した続きで、卵の中でも卵黄についてお話していきます。

プリントの本文:結合剤と希釈材12:卵2

卵黄

卵黄は十分濃度の濃いエマルションである:15%以上の水分、17~38%の脂質、15%のいくつかの目立った界面活性剤の特性を持つたんぱく質(エマルションの安定剤)

乾燥性をもらない脂質:よって可塑性として役立つ。塗膜は大変早急に固体化し、魅力あるしなやかさを示す。しかし形成された塗膜は柔らかいままであるがゆえに大変力学的な行いに対し敏感である。

エマルション

  • 内層の添加によりエマルションが増粘する
  • 外層の添加(外層はエマルションに特色、粘性の有無をエマルションに与える)はエマルションに流動性を与える

プリント本文

Le jaune d’oeuf

Le jaune d’oeuf est une émumsion assez épaisse:

+de 51% d’eau

17 à 38% de lipides

15% de protéines dont certaines ayant de remarquables propriétés tensioactives (stabilisent les émulsions).

Lipides non siccatifs: servent donc comme plastifiants. Le film se solidifie, très vite et présente une souplesse attrayante, mais le film formé est et demeure mou, donc très sensible aux actions mécaniques.

Emulsion

  • L’addition de la phase interne épaissit une émulsion
  • l’addition de la phase (qui donne son caractère, gras ou maigre, à l’émulsion) fluidifie une émulsion

本日のまとめ

そういえば、絵画関係だと当たり前のような素材なので、前の記事で「卵」を取り上げました際に何も書きませんでしたが、結合剤の話なのに「卵」?と思われるかたもいるかもしれませんね。

絵を描く技法の中に、卵を使う「卵テンペラ」という技法がありまして、それゆえに「卵」というのは絵具の結合剤として非常に有用です。

加えていいますと、一般的に水彩やポスターカラー、アクリルに慣れていると、「結合剤」=「透明に近いもの」ということで、「卵」を使うといっても「卵白」でしょう?と思われそうですが、実のところ「制作」の場においては「卵黄」を使用した(しかも多くの場合「卵黄」のみを使用した)絵画が多いですね。

これは実際に同じ図像の絵画を、卵白を結合剤にした絵具と卵白を結合剤にした絵具を用意して、全く同じに模写してみるとよいのですが、色彩のふくよかさとでもいうのでしょうか、得られる美的結果が全然異なります。

勿論「卵黄」を用いたことによるデメリットというものもありますが、「制作する」上では「卵白」よりは「卵黄」が結合剤として軍配が上がるように思います。

対して過去記事に書きましたとおり、今は昔となりましたが、かつては修復材料として「卵白」が用いられていましたが、同じ用法としておそらく「卵黄」が用いられることはなかったと推察します。過去の記事のとおり「卵白」を使用する作品修復の知識や技術もすでに伝承されてはいませんが(伝承されていても、大多数の修復関係者の知るところではありませんが)、それでも修復においては「卵黄」よりも「卵白」の使用に軍配が上がっていたんですね。

これ、実際に先ほどのような模写をしてみると「なぜ」が実感としてよくよくわかります(ブログ主は同じモチーフではありませんが、卵黄・卵白の両方で模写をしてみています)。

こういう「なぜ」が理解できると、「なぜこういう素材を用いて制作したのか」や、「どういう素材を用いて修復するとベストか」ということが理解できるので、制作するにせよ保存修復の道に興味があるにせよ、有用かなと個人的に思っています。

ということで本日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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