【用語】絵具に関する概要(ベルギーの大学での授業Ver.34):結合剤と希釈材14:脂質あるいは油脂2

用語

毎度毎度同じシリーズ内で同じ文言を繰り返してはおりますが、前置きとしまして、この用語シリーズはブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となります。西洋絵画を構成する素材の一つである絵具を理解する足がかりの一つとして記事にしております。ただ、もし文化財保存修復を学びたいなーという方が読まれている場合は、こういう記事のみをうのみにするのではなくて、いろんな文献を比較参照してくださいね(^^)。

また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分、あるいはわかりにくいがあります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。顔料や絵具に関しましては、現在やっている【用語】シリーズに関わらず、すでに過去の記事で何度か書いている部分もありますので、そちらもご覧いただけるとわかりよいのかな…と思いつつおります。

本日からは脂質あるいは油脂類の中でも亜麻仁油(リンシードオイル)の続きです。先の記事の続きになりますので、もし気になる場合は先にそちらをご覧くださいね。

プリントの本文:結合剤と希釈材14:脂質あるいは油脂2

10世紀のエラクリウスと12世紀初期のテオフィルスは、すでにどのように亜麻の種子から亜麻仁油(リンシードオイル)を抽出し、またどのようにこれを白鉛ととみに加熱するかについて記述している。

多くの処理は油の乾燥性を上げることを可能にする。150~160℃で加熱することにより、通常少量の鉛やコバルト、もしくはマンガンの存在の下、乾性油を得ることができる。このプロセスは酸化と重合の初期段階を引き起こす。これにより形成された材料はより粘着性を持ち、より乾燥する。

油の参加ではくむしろ油の重合を促進させながら着色のより少ない製品を得ることが可能である:それはスタンド化である。重合は乾燥性を高め、また形成された塗膜の艶や水に対する抵抗力を上げると同時に、着色は殆ど与えない。

形成された固い塗膜が示す様子は、油に加えられた顔料の量やその顔料自体の性質、あるいはそれらの適用技法によって艶があったりなかったり、あるいは多孔質であったりエナメル的であったりと、大変様々である。柔軟性は優れているが、しかし経年に伴ってそれもうしなわれていく。

プリント本文

Eraclius, au Ⅹème siècle, et Théophile, au début du ⅩⅡème, décrivnt déjà comment extraire l’huile de lin des graines et comment la cuire ensuite avec de la céruse.

Divers traitements permettent d’augmenter la vitesse de séchage de l’huile.

Par chauffage à 150 – 160℃, généralement en présence de faibles quantités de sels de plomb, de cobalt ou de manganèse, on obtient l’huile cuite. Ce procédé provoque un début d’oxydation et de polymérisation. La matière formée est plus visqueuse et sèche plus rapidement.

Des produits moins colorés peuvent être obtenus en favorisant la polymérisation plutôt que l’oxydation del’huile: c’est la standolisation. Le chauffage s’effectue à l’abris de l’air, à des températures comprises entre 280 et 310℃. La polymérisation augmente la siccativité mais aussi la brillance et la résistance à l’eau du film formé, qui est aussi moins coloré.

Le film solide présente des aspects très divers, mat ou brillant, poreux ou émaillé selon la quantité et la nature des pigments ou la technique d’application. La souplesse est excellent mais elle diminue au cours du vieillissement.

本日のまとめ

今回の記事を理解するには、乾性油には「乾燥」という文字がついているけれど、「乾燥」するのではなく、「重合反応」によって固化し、液体が塗膜になるということを理解することが重要になります(これに関しては過去の記事でも書いていますので、是非ご参照ください)。

この重合反応は「酸化」することで進行しますが、この進行を加速させる方法として、加熱したりある種の金属で反応促進することが挙げられます。ですので、別段加熱せずとも鉛やコバルトなどを含む顔料と油を練った絵具というのは、他の素材(例えば炭素などの軽い元素などからなる素材)からなる絵具と比較すると固化しやすかったりします。

実際油絵を初めて使うと、「こんなにいつまでもべとべとしている絵具なんて使いにくい!」といかなる人も必ずいうのですが(ブログ主もそうでした。笑)、そのデメリットを少しでも克服しようというのが、こういう「重合反応を進行させる」というやり方なんですね。

実際画材屋さんにいくと「スタンドオイル」という、すごくとろみのある黄色味の強い液体を見ると思いますが、これがいわゆる亜麻仁油の乾燥を早めるように加工した油だったりします。

ただし、現代市販されている素材というのは、「スタンドオイル」に限らず、一般的な普通の「リンシードオイル(亜麻仁油)にせよ、上記のような単純に加熱するとか、金属を含ませるとか、そういうことだけに終始しているかは不明です。現代の市販品の場合、乾燥性を早めるのは勿論、素材の劣化を遅らせたりなんだりのために添加物的なものが入っているのでは?などと考えたりする反面、「販売物の正確なレシピ」というものは、製造販売会社以外は知りようがないからです。

ですのでこういうプリントの記述なども、ある程度古い話のみかもしれない、現代の素材では必ずしも合致しない話かもしれないなど、ある種の疑いといいますか、疑問などを持ちながら資料などを読むと、色々面白い発見があるかもしれません(^^)。

というところで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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