毎度毎度同じシリーズ内で同じ文言を繰り返してはおりますが、前置きとしまして、この用語シリーズはブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となります。西洋絵画を構成する素材の一つである絵具を理解する足がかりの一つとして記事にしております。ただ、もし文化財保存修復を学びたいなーという方が読まれている場合は、こういう記事のみをうのみにするのではなくて、いろんな文献を比較参照してくださいね(^^)。
また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分、あるいはわかりにくいがあります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。顔料や絵具に関しましては、現在やっている【用語】シリーズに関わらず、すでに過去の記事で何度か書いている部分もありますので、そちらもご覧いただけるとわかりよいのかな…と思いつつおります。
本日はヴェネツィアテレピンに関して。
画材屋さんにいくと今でも販売はされているヴェネツィアテレピン。今は昔ですが、かつてブログ主が油絵を描いていた時の描画油を自分で調合していた際に、調合材料として入れていたような気もする(うろ覚えですねー)。でも、多分現代の画家さんでヴェネツィアテレピンを使う方というのはあまりいない…かな。ブログ主自身の個人的な感想ではありますが、単体では使いよい素材ではなかった記憶ですので…。
ただ、修復関係者の目線でいいますと、ヨーロッパのある程度古い作品にはこの素材が使われていただろう作品というのがありまして、ブログ主が担当した作品にもそれは何回かあったのですが、まぁ…修復視点ですとややこしい素材ではあります。
というわけで本日の記事をどうぞ。
プリントの本文:結合剤と希釈材20:モノ、セスキ、ディテルペン(オレオレジン):ヴェネツィアテレピン
モノーセスキーディテルペン:オレオレジン
特有な油(揮発性精油)の中での樹脂の天然溶液である(=テレピン油やアスピック【スパイクラベンダー】油のような)。
ヴェネツィアテレピン
- 中央ヨーロッパの山岳地帯で生育したカラマツに由来する
- 樹脂は樹の幹の中心にあり、外皮にはない(テルペン樹脂はある種の樹木の傷をふさぐことを主要機能とするようである):よってベネツィアテレピンの採取においては深く機械で穴をあける必要がある。この採取口は表面でふさがれ、夏季の間空気に触れない状態にしてこの樹脂は蓄積される。この樹脂は18~19世紀に大変用いられた。しかし17世紀から用いられたようである。
ストラスブルグテレピン:16世紀によく用いられた
ボルドーテレピン
ジュラテレピン
オレオレジンは際立った褐色化をしながら老化する。
プリント本文
MONO-,SESQUI-,ET DITERPENE:les oléo-résines
Ce sont des solutions naturelles de résines dans une huile essentielle (=essences volatiles comme l’essence de térébenthine, l’essence d’aspic).
Térébenthine de Venise
- Provient d’un mélèze qui pousse dans les montagnes de l’Europe centrale
- La résine se trouve dans le coeur du tronc et non à l’extérieur (les résines terpéniuqes semblent avoir comme fonction principale de colmater les blessures de certaines espèces d’arbre): il faut donc forer très profondément pour la prélever. L’orifice est obturé à la surface et on laisse la résine s’accumuler pendant les mois d’été à l’abri de l’air. Cette résine a été très utilisée aux ⅩⅧème et ⅩⅨeme siècles, mais elle semble avoir été employée dès les ⅩⅦème siècle.
Thérébenthine de Strasbourg : beaucoup employée au ⅩⅥème siècle
Thérébenthine de Bourdeaux
Thérébenthine du Jura
Les oléo-résines vieillissent en donnant un brunissement prononcé.
本日のまとめ
ヴェネツィアテレピンという素材を現代において修復の素材に使うことはまずないのですが、ヨーロッパの古めの作品を取り扱うと、時々使われている素材ですので、この素材の存在を理解することは結構重要になります。なんといいますか、忘れた頃にやってくる。そんな感じの素材です(苦笑)。
「忘れた頃に」とは言いましたが、多分、どの修復関係者にとっても「関わって嬉しい」素材ではないだろうて、一度修復で関わった方の場合、「溶剤調査」などの段階で「もしかして…(汗)」と一気に記憶がよみがえるタイプの素材かと思います(^^;)。一度関わると忘れることはできない素材ですね…。手の感触と溶剤反応の感じがちょっと特徴的かもしれないです。
ブログ主はヨーロッパで留学している際の修復作品の中で使われていたのを取り扱ったのがファーストコンタクトだったのですが、正直学生時代でよかったと真剣に思っています。お金をもらってお仕事している時に初めてこれに出会っていたら(そして全くのフリーランスで、周囲に同じ専門のプロがいない状態だったら)、大分悩んだだろうなと。あくまでもブログ主の個人的な感想ではあるのですが、ややこしい素材ですので、だからこそ滅多にはでてこない素材であるにも関わらずそれでも十分な知識が必要な素材ですね、ヴェネツィアテレピンは…(遠い目)。
というわけで大分個人的な感想の多い記事ではありますが、本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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