当ブログは、「絵画保存修復家になれる」ブログではありませんので、 修復関係、文化財関係などの職業に就く場合は、大学なりなんなりの学校に進む必要が ある旨を、「絵画保存修復を学ぶ1」をはじめ、ちょこちょこ色々なところで書いております。
ですので、本日は「じゃあ、どこで学べばいいんですか?」という話を しようと思っています。
絵画保存修復を学ぶ上での選択肢
先に結論を申し上げると、以下にいろいろな選択肢は書きますが、結局のところ 「自分が本気で勉強したいのか」 あるいは「学校を出た後の自分がどうしたいのかが明確か否か」に 全てがかかっていて、そこがしっかりしている学生さんにおいては、 どこで学んでも大丈夫だと思います。
逆をいうと、 「とにかくどこでも学校にさえ行けば、修復家になれるんでしょう」と 受動的な考えで学校に来る学生さんの場合は、実りは少ないかもしれません。 「絵画保存修復を学ぶ2」で書きました「失敗を恐れて、何もしようとしない人」も同じです。
全ては自分次第、ということを前提に、学校の選択肢を以下のとおり見てみます。 ただし前提としてましては、「学士」卒業のみではどうにもならないので、「修士」まで 進むことが前提です。
- 「保存修復関係の学部のある大学に行く」 + 「出身大学の大学院に進む」
- 「保存修復関係の学部のある大学に行く」 + 「日本国内のよその大学院に進む」
- 「保存修復関係の学部のある大学に行く」 + 「留学」
- 「全く保存修復と関係のない学部の大学に行く」 + 「日本国内の国立の大学院に進む」
- 「全く保存修復と関係のない学部の大学に行く」 + 「日本国内の上記以外の大学院に進む」
- 「全く保存修復と関係のない学部の大学に行く」 + 「留学」
- 「保存修復関係の専門学校的なものに行く(4年生大学に匹敵するものに限る)」 + 「日本国内の国立の大学院に進む」
- 「保存修復関係の専門学校的なものに行く(4年生大学に匹敵するものに限る)」 +「日本国内の上記以外の大学院に進む」
- 「保存修復関係の専門学校的なものに行く(4年生大学に匹敵するものに限る)」 + 「留学」
- 「大学にいく段階で留学する(ヨーロッパの場合は、修士まで込みで卒業となるので)」
あくまでも思いつく限りのもののみですが。 ちなみにブログ主は「項目5」に、さらに「留学(学部と修士)」が加わっているので、 あまり参考にならないかも…ですね(汗)。
上記はあくまでも「学部3パターン」に「その後3パターン」を足してみただけなのですが、 それでも結論としては学生さん本人の頑張りに依存するものであって、 「どの学校を選んだから!」っていうそこに、学力として大きく関わることって そうはないかもしれないな、と思っています。
どの学校を選んでも、そう変わらないという理由
あくまでも「学ぶ内容」に関してのみを比較として持ってきておりますので、 かかる費用や、入学に必要な技能などに関する差などは当然あることは前提です。 加えて言えば、「留学」においては、「留学できるだけの言語力」が求められますので、 これを選択する方は、本当に死ぬ気でやる気なんだろうと推察する反面、母語ではないために 必死でやっても母語で学んでいる人との差で悩むという、日本語で学ぶ際に 出てこない悩みがプラスされるので、有意義さとその悩みでプラスマイナスゼロとしています。
で、先に「項目4~項目5(あるいは項目6も含む)」の場合、 「保存修復」と関係ない学部出身なので一見不利に見えます。 上記にも書きましたとおり、私は「項目5(他学科から国立の修復修士)」ですが、 この道のりの場合、どのようなことが発生するかと言いますと、 「保存修復学科のある大学」あるいは「保存修復関係の専門学校っぽいところ」で学ぶ 「学科」関係を独学で、暗記・理解して、入試を受けます。 (少なくとも私が入試を受けていた時代はそうでした。 ちなみに勉強する際に読むべき本は、入試の一年前に大学院にご挨拶に行った際にお伺いできました)
「大学の学科」はあくまでも「基礎」なので、「基礎」程度なら独学でもできるのです。 半面、大学で専門的な人に教えてもらえるのは(しかも実技もできるのは)、独学よりも よほど有意義で、「なぜこれを理解しなければならないのか」なども近道で学べる良さがあります。
とはいえ、「大学の中」にいると必死さはなくなります。 これは私自身が大学で教えていたからの実感ですが。 なぜなら、少なくとも日本の場合「授業」は受動的に受けるもので、 能動的なものではないからです。 とりあえず授業を受けて、その結果がたとえ「ひどいもの」でも、 「不可」とつかない限りは「自分はきちんとわかっている」と勘違いもします。 さらに、授業の中には得意なものや苦手なものがあるでしょうが、苦手なものの場合は特に 「惰性で」「必須科目だから」「単位取れてないと卒業できないから」受けているという状態になり、「これを覚えなければ、修復家になれない!」と思う学生は殆どいないからです。 つまりは、「理解していなくても」とりあえず「単位は取れる」場合があるので、 長期的な目線では、本人のためにはならないことがある、ということです。
これに対して「国立修士の入試」を目指して独学している人の場合は、 厳しい試験に合格しないと、スタート地点に立てません (私が受けた当時は、「国立修士の入試」は3日間ほど時間がかかりました。 ちなみに留学先の入学試験は、7日間試験がぶっ続けでしたよ…)。 ですので、大学で自動的に教えてもらえるものを、独学で必死に勉強します。 加えて「国立修士試験」の内容は、結局のところ「ただの試験」ではなく、 「今後授業中に説明しないけど、常識的に知っておいてもらわないと、授業中だけでなく、 将来的にこの世界で仕事したいなら、困るだけだからね?」というものですので、 一時しのぎのではなく、きちんとした理解が求められます。 ですので、この試験に通っている段階で、正直「大学程度の学科の力」くらいはあると 考えられるわけです。
さらに言うと、文化財関係、保存修復関係は、本当にオールマイティの能力が求められます。 実のところ、「修復業界に来る前は、違う学科(仕事)にいました」という方は結構いまして、 それが実際の修復の仕事に役立つという方、結構知っています。 これは留学時の同級生ですが、「元弁護士」と「元銀行家」がいました(笑)。 同じく留学時の同級生に一番多かったのは「元・美術史学科卒」「元・化学系学科卒」が いましたね。 学んでいる最中は、この「元・美術史卒」と「元・化学系卒」は、 前歴を有利に使っていたので、研究や報告が上手でしたね。 経済、法律、歴史、化学…そんなもの保存修復に関係あるかって、深く関係がありまして。 だからこそですけど、他の学部にいたことが、プラスにこと働いても、マイナスにはならないと 考えます。 ただ、これもどれだけ本人が頑張るかにかかってきますが。
本日のまとめ
ブログ主が教員をやっていたころ、入学希望者のお悩みでよくありましたのが 「この大学に入ったら、修復家になれますか」でした。
でも、例えば「野球で有名な高校」に入学しても、入学しただけでは だれもそこからプロにはなれないわけですよね。 高校や野球部の監督なんかが保証はしてくれないことですよね。 自分の頑張り次第じゃないですか。 お医者さんも、弁護士さんも、小説家だって、学校卒業しても、それだけではなれません。 これも本人の頑張り次第ですよね。
さらに言えば、先日江頭2:50さんのyoutubeを見ていて、「ああ!」と思ったのですが、 江頭氏がある専門学校の入学式で(以下は要約になりますが)、 「夢を追いかけていたら、必ず何かうまくいないことが起こるのは当たり前だ。 なぜならは、あなたたちが追いかけているのは夢だから。 簡単に手に入らないから、夢なんだ」 とおっしゃっていて。
簡単に手に入らないことが前提で、「それでも必死で頑張る」ができる学生さんなら、 どんなところでも咲けるし、どんな職業でも頑張れると思うのです。 学校っていうのは、独りだと持続できない「頑張りの持続」をよくしてくれたり、 同じ夢や悩みをもつ人と一緒に学ぶことで、自分だけでは得られない「気づき」が得られたりって、 そういう所だと思うのです。 だから、「学校が」どうにかしてくれる、じゃなくて、 「自分が学校をどう利用したら」自分の夢に近づけるか、とかだと思うのです。
次回にもう少しお話したく思います。
本日も最後まで読んで下さり、ありがとうございます(^^)。
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