面接(とくに大学入試の面接)って、何をする場?(全4話の第2話):その営業活動の場所、合っていますか?

修復を学ぶ

今回は全4話で、大学入試における「面接」ってどういうものなのかというお話をしています。今回は第2回目。

先の記事にて、大学入試の面接を「合否が決まる場所」とかそういう場所として認識するのではなく、「自分自身をアピールする営業活動」の場所であると説明しました。これはあくまでも目的として1つ目ではありますが。

その理由として、面接官はだいたいは受験生に関して詳細を知らないことから、「自分という人間の良さ、独自性」が面接官に伝わらないと、面接官は「この人は当大学(当学科)によさそうだな」と判別しきれないんですね。なんせ、未知の相手ですから。

その商品、その場所でアピールしても大丈夫ですか?

受験生の人柄が未知だからこそ「受験生自身を知りたい」というのが面接官の願いですし、だからこそ「あなた自身をアピールしてほしい」という場が面接の場であるのですが、「私は優秀である!」という話がききたいわけでもありません(勿論優秀な方はとてもよいのですが)。受験生の良さ、独自性を知りたいのと同じに「大学や学科のポリシーや、考え方」への理解が十分にあり、それに対して適正かな、ということを測りつつ面接官はお話をしています(つまりはある種就職活動と同じで、受験先の大学や学科への研究の有無も見ている、ということです。大学や学科をよくよく知らないと、「適正な会話」ができないので、そういう点も見ています)。

文化財保存修復の学科がある大学は非常に限られているので、例えばたくさん大学などのある「美術学科油絵科」などで考えてみるのですが、一言に「油絵科」という「描く学科」といいましても、その「ポリシー」は大学ごとに異なります。「最終的に非常に自由制作が可能」(というか、それ自体を求める)場所もあれば、相対して「写実しか認めない」という場所もあります(ブログ主が卒業した大学の油絵科での卒業制作は、当時、絶対的写実な上、必ず1つ決まったモチーフが画面に入っていないとダメでした。これは当時のみかもしれませんが、大学としては非常に珍しいタイプのところでした)。

文化財保存修復学科は選択肢が少ないですが、しかし実のところ全然選択肢がないわけではありません。「大学」なのか「専門」なのか「大学院」なのか「留学」なのか。色々な方が、それぞれの考えで、それぞれの利点や不利点を理解した上で、それらを選択しています。なぜならば、それぞれのいいところ、悪いところ、合う、合わないがあるからです。逆をいうと、本人のやる気さえあれば、どこで学んでも求める未来にたどり着けるとブログ主は思っています(ブログ主自身、最初は油絵科を卒業した上で、文化財保存修復は国立大学大学院にて初めて学んだ手合ですので、大学から文化財保存修復を学ばなくとも、ある種大学は別の場所で学んでいるからこその利点もあります)。そういう「相手(学ぶべき場所)」と自分自身が適正なのかも理解する必要もあると思うんですよ。

なぜこういう話をするかといいますと、営業活動というのは「その商品を知らない人」にアピールする行為ではありますが、「その商品を知らない人のニーズ」と合ってない場合は、興味を持ってもらったり、「契約しましょう!」と言ってもらえる確率が減るからです。

例えば、医療関係者に土木工事用の機器を営業しても、購入してもらえる期待度は少ないですね。あるいは同じ医療関係でも、「歯科」に「形成外科」専用の機器を営業しても、似て非なるところへの営業になるので難しいかもしれないです。

だからこそ、「この大学、この学科はこういう人を求めているよ」という内容を理解することって、とても大事だと思うんですよ。

自分自身と、大学などとのマッチングを考える

「自分がその場所と合っているか」というのは、美術系の大学の場合は「卒展」あるいは「オープンキャンパス」にいって見極めるのがよいと考えます(一般公開されているなら、卒論発表会に参加するのもよいでしょう)。

「卒展」が先にきているのは、「学生の最終形態」であると同時に、「何を以てして優秀である」としているのかという「学科の考え方」が端的にわかるからです(上記で言えば、油絵科で「写実の作品しかない」「同じモチーフが作品に入っている」となると、「抽象画が描きたい」「アニメのような絵が描きたい」という希望に合致しないことがわかります。文化財保存修復の場合は「研究」が必須になるので、そもそも自分に研究って…、ってところから考えることになりますし、またその場にいる学生に「研究」への道のりについて話を聞くこともできます。

また、オープンキャンパスなどでは、大学の建物内を色々見て回れますし、いろんな在校学生と話をすることもできますので、「実際どういう勉強をしているのか」などの実際を質問することもできるでしょう。

他、勿論色々保存修復に関する本や報告書を読むことは必須という前提で、「大学」や「学科」の考え方、「その学科」ではどういうことを勉強していて、どういう人が求められるのか、ということをしっかり考えた上で、「自分は適合する」と思うところで、初めて自分が売り込めますし、また逆に「どうして自分が売り込めるのか」を考えるべきなのです。

こういった事前調査なしに、自分の将来を決める学科や大学を決めることは非常に危険です。なぜならそれは「その学科の本来の姿」とは異なる「イメージ先行」での選択だからです。小説や漫画といったクリエイティブな媒体が、必ずしもきちんと取材がなされたうえで書かれたものではないということ、忘れないでほしいです(実際文化財保存修復に関しては、某有名小説が、きちんと取材しないまま書かれていることは業界では知られている反面、一般には知られていないことでしょう)。

だからこそ、きちんとした専門の本を必ず読むことは前提です。希望する学科の専門書1冊すら読まずに面接に行くのは、ありえないことぐらいにご理解いただけるとよいかと思います。

本日のまとめ

今回は、「面接」はいわば「自分をアピール」する場であるけれども、まず「アピールする場」が本当に正しいのかなということもきちんと考えようということをご説明しました。

営業場所が適正でないと、営業活動がうまくいく確率が低下するためです。

面接官の立場で学生さんのアピールを聞くと、「なぜ文化財保存修復なんだろう」という疑問を通り越して、なぜ「絵画科(あるいは彫刻科など)を受けないんだろう」という疑問を抱くことがよくあります。そういう場合は「アピールが悪い」か、「営業場所」が悪いということです。

営業活動をしっかり成功させるためにも、「営業場所が正しい」ことを確認(卒展、オープンキャンパスへの参加、専門書を最低1冊読む)をしましょう。

本日も長くなりましたが、最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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