文化財保存修復のための西洋絵画の歴史:新古典主義とロマン主義

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事より、美術や絵画の発展の歴史について、ごくごく簡略的なお話ですが、書いております。また、美術史の順番どおりとしてまずギリシャ美術に関してや(ギリシャ美術続き①ギリシャ美術続き②)、ローマ美術(ローマ美術①ローマ美術②)、ロマネスクとゴシックおよび北方ルネサンスルネサンスマニエリスム、バロック美術(バロック①バロック②)、ロココ美術に関してすでに記載しております。

本日は新古典主義とロマン主義について記載します。

なお、このシリーズの記事で常に同じに書いておりますが、当ブログでは美術史に関しごくごく簡略的なお話のみを書いていきます。あくまでもこういう記事を読むことで、当時の美術作品および西洋美術史などに興味を持ってただけたら嬉しいな、という記事であって直接研究やお勉強に役立つものではないとお考えください。

ですので詳細な美術史などを学びたいなどの場合は、いろんな文献などがでておりますので、是非そちらをご参照くださいませ(ぺこり)。

新古典主義とは

新古典主義は18世紀半ばから19世紀始めにかけて、古代ギリシアローマで達成された「理想の美」を目指す美術です。

ロココ美術が当時においては退廃的な芸術と認識されていたことから、ロココのファンタジー的様式への反発が発展の理由として挙げられます。

また、イタリアのポンペイやエルクラネウムでの遺跡の発掘により、古代に関する興味が高まったこともその古代風の美術が流行したことに寄与しています。

美的様式を典型的、規範的な古典とみなし、それらを創作の基礎として意図的に作品に取り入れていきました。

また、明確な輪郭線による形態把握と、安定した画面構成を重要視し、高度な技巧に裏付けされた写実的な様式が主流となりました。    

ちなみに、18世紀後半は、アメリカの独立革命や、1789年に起こったフランス革命など、大きな社会変動をみた激動の時代でした。

中でもフランス革命は、旧体制(アンシャン・レジーム)のフランス社会を根幹から覆すと同時に、全ヨーロッパに多大な影響を及ぼし、近代社会成立の転換点となりました。

このフランス革命は政治革命であると同時に、一種の芸術革命でもありました。

1793年にルイ16世とその妃であるマリー・アントワネットが処刑されることで、それまでわずかに形式が残っていた軽やかで華やかなロココが完全に途絶えてしまうと同時に、ロココから新古典主義への転換が決定的なものとなりました。

ロマン主義とは

新古典主義がロココに対する反動あるいは古代への憧れとして生まれてきたの対し、ロマン主義は古代美術の安易な模倣、亜流に堕しがちな新古典主義への反動として、風土的にはドイツやイギリスなど、北方のほうから生まれてきた動きです。

意思よりも感情、理性よりも想像力、形式よりも自由、客観よりも主観、形態より色彩、定義するより暗示すること、ラテン的な明晰さよりもゲルマン的な神秘性を愛するロマン主義は、様式としては新古典主義のような美術の流れの中での統一性や一貫性には欠けるものの、その多様性が特質の一つということができます。

ダイナミックな構図と激しい動勢表現を好み、また華麗な色彩配合や劇的な明暗効果を得意としました。 

新古典主義が異教的な古代ギリシャ・ローマを理想としたのに対し、フランス革命を機に信仰の危機を感じ取ったロマン主義芸術には、ヨーロッパが一つの信仰で結ばれていたキリスト教中世への憧れが含まれています。

こういったロマン主義は、芸術運動としてはリアリズムにとって代わられることとなりますが、個性を尊重し、自由を求め、夢や憧れを生きる上でのばねとするその精神は、現代においても生きています。

本日のまとめ的なもの

西欧美術においては、前世代的な美術の流れを否定しながら進んでいくため前世代と当時代の流行のようなものは全くことなる様相を示します。

ロココのふわふわ感から新古典主義のどっしり感、新古典主義の模倣的統一感からロマン主義の自由的思想とダイナミズム…。

とはいえ、誤解してはならないのが、こういったいろんな表現ができるのは、そもそもにしっかりとした「基礎」を身に着けているからこそ。

ブログ主世代においては、美術系大学受験に際し、画塾に行かずして入学なんぞ不可能でしたが(そもそもに最低倍率が12倍、最高倍率が45倍くらいだったでしょうか)、その受験に際して「目に見えたものをそのまま描けるだけの技術」が求められました(その最たるものが石膏デッサンだったりするのですが)。

目の前にある、動かないものすらそのまま描けないのに、頭の中で空想した「描きたいもの」を描けるわけがないからです。

美術の流れあるいは画家の表現として、個人的な好き嫌いは当然あるべきものですが、それでもそれぞれの画家の表現の下には、それを支える強靭な屋台骨である基礎がしっかりとあることを思うと、こういう時代の画家たちの作品にはなんらかのすごさというのが感じられたりするんですよね…。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました