文化財保存修復のための西洋絵画の歴史:ロマネスクとゴシック

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事より、美術や絵画の発展の歴史について、ごくごく簡略的なお話ですが、書いております。また、美術史の順番どおりとしてまずギリシャ美術に関してや(ギリシャ美術続き①ギリシャ美術続き②)。ローマ美術に関してお話しました(ローマ美術①ローマ美術②)。

本日はこの続きであるロマネスク美術について。

なお、このシリーズの記事で常に同じに書いておりますが、当ブログでは美術史に関しごくごく簡略的なお話のみを書いていきます。あくまでもこういう記事を読むことで、当時の美術作品および西洋美術史などに興味を持ってただけたら嬉しいな、という記事であって直接研究やお勉強に役立つものではないとお考えください。

ですので詳細な美術史などを学びたいなどの場合は、いろんな文献などがでておりますので、是非そちらをご参照くださいませ(ぺこり)。

ロマネスク美術とは

ロマネスクというと、どピンクで、日本では無名だけどフランスでは結構知名度のある「レ・ロマネスク(レ・ロマネスク – Wikipedia:外部リンクです。自己責任でご覧ください)」をふと思い出してしまいますが、そんなニッチなネタは置いておいたほうがよいでしょう(苦笑)。

というわけで閑話休題、ロマネスク美術ですが、ロマネスクという言葉は、ローマ風の、という意味で、「ローマ美術に及ばないもの」という軽蔑の意味を含んで後年の人々によって呼ばれた名称です。

しかし今では中世ヨーロッパに栄え、それぞれの土地で固有の性格を見せる独創的な宗教美術、いわゆる欧州にキリスト教が定着した時代に極められたキリスト教美術のひとつの頂点と考えられています。

ロマネスク美術は、11~12世紀のヨーロッパで建築に始まり、他の諸美術に波及した新しい美術様式を指します。だからこそではありますが、絵画のカテゴリーでは建築を高めるためのフレスコ壁画が盛んとなり、(サンタンジェロ・イン・フォルミス聖堂壁画 11世紀後半)、ステンドグラスによる聖堂装飾もこのころに始まります。加えて写本挿絵、各種工芸などにもすぐれたものが生まれました(バイユー・タピストリー 11世紀)。

反面ロマネスク美術の特色は、作者つまり個人的な芸術家の名前がでてこないという匿名性にあります。例えばルネサンスの画家などの場合作品の作者の名前が分かっていたりしますが、この時代においては建築や彫刻、絵画に署名や年紀は殆ど記されませんでした。ですのでこのころの作者たちは、芸術家というより、職人と近いと考えられます。

また、ロマネスク美術のもう一つの特徴としては、他の宗教と同様に、世俗の美術というよりも神への信仰を求めた聖堂に集中している点にあります。したがって、建築がすべての土台となり、ついで聖堂を飾る浮彫や壁画が大きな役割を担うようになっていました。

ゴシック美術とは

先のロマネスクの次にやってくるのがゴシック美術です。ゴシックという言葉はなんとなく現代でも耳にすることがあるように思います。

例えばゴスロリというカテゴリー(?)がありますが、あればゴシック・ロリータの略ですね。

このように現代でも耳にする「ゴシック」という言葉のそもそもの発端は、ルネサンス時代にイタリアの人文学者たちがルネサンスに先立つ美術に「マニエラ・ゴティカ」、つまり「ゴート人の美術」と名付け、「野蛮な(ゴート風の)」という蔑みを込めて呼称したことによります。しかし実際のところゴート人とこの美術とはなんら関わりはありません。

ゴシック美術は、12世紀中ごろ、パリを中心にフランス北部を指すイルドフランス地方で興った宮廷文化の開花と都市の隆盛を背景にした新しい美術を指します。

ロマネスク美術を受けて、キリスト教美術を基調としながら隆盛を迎え、大聖堂建設が様式の主要な役割を演じました。ですのでその聖堂を荘厳なものとするために、絵画、彫刻、ステンドグラスなどそのほかの芸術も触発されて発展し、大芸術としての建築の推移に従って変改をしていきます。      

また時代ともに信仰が聖職者のみのものではなく、市民のものになってくるに従い、マリア信仰がゴシック時代を特徴づけていきます。それまでは非常に厳格で厳しい宗教観であった中で、聖母の慈愛に満ちた姿、キリストの死を慟哭する聖母などが数多く登場し、世俗の人々の心を動かし、人間的な情感に裏付けられながら次第に写実的傾向を強めていきます。

なんていうんでしょうね。人間の感性というのは数百年の差があっても変わらないのだなぁと思うのですが、厳格というのは非常に誠実な姿勢ではあるのですが、常に常に厳格にということが実施できる人もいれば、できない人もいます。厳格に宗教に相対することができることは素晴らしいことではあるのですが、それを強要されると嫌になっちゃったりもするじゃないですか。でもそれは信仰者を増やしたい立場からすると喜ばしくないんですよね。

ですので、ゴシックではロマネスクと比較して、喜びや悲しみ、哀れみや恐れなど、様々な情緒に強く訴え換えける表現する点で、人間くさく、わかりやすい美術と考えられます。

とはいえこれは過去のロマネスク美術と比較してのお話であって、ルネサンスや現代のような後世と比較するとまだまだ固い部分があったり、奥行きなどの限界を感じることもあるかもしれません。しかしあくまでも過去との比較としてご理解いただけるとよいかと思います。

本日のまとめ的なもの

ロマネスク・ゴシックの当たりは、美術の教科書などによっては暗黒時代的な扱いだったりするのでなかなかややこしかったりするんですよね…。

実際建築関係の話が出てくるので、そういう意味でもややこしかったりするんですが(汗)。

ただ、「前の時代とはこういう考えが違うよ」みたいなところが理解できると美術史の基本を知るという意味では十分すぎるほどではないかなと思っています。

とはいえ、実際ロマネスク・ゴシックの建築物の写真を見て頂けるとわかりますが、昔々の人々がこういう建物作っているんだ!という意味合いでは本当にすごいので、よかったら色々画像を検索してみてほしく思います。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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