紙ってどんな素材⑫?:羊皮紙に関連して、文字に関して

修復を学ぶ

ここしばらく紙の記事を書いていますが、直近の記事からその中でも羊皮紙の話を書いております。

なお、直近の記事でも書きましたが、羊皮紙は一般的には「紙」ではない、ということを前提としてご理解ください。

さて、そもそもに羊皮紙あるいは獣皮を素材とした薄くて平らな素材が、「絵画」に使われるという機会は決してゼロではないものの、実際「絵画」としての作品を見ることは殆どないように思います(幸いにして、ブログ主は羊皮紙に詳しい方に羊皮紙を基底材とした絵画を見せて頂いたことはありますが)。

このような羊皮紙は小アジアからのメソポタミアにかけての牧畜社会が創案し、生産技術を確立した産物であると同時にそれが前2、3世紀から約1千年の間に地中海世界を経て西欧のキリスト教文化圏の中で技術的に精錬されたものといえます。

とはいえ、皮を半透明かつ薄手になめす最古の技術例は前10世紀ごろの小アジアで、打楽器に使われた皮が発見されている模様。

ですので、羊皮紙への理解を考えるとき、実際ブログ主が留学していた時もそうですが、単純に「羊皮紙」のみを学ぶのではなく、そもそもの羊皮紙の元である「生皮」や、あるいは同じ獣皮からなる「なめし革(いわゆる現代でいう鞄や靴にするために加工した革)」に関する理解なんかも非常に重要となります。

加えて、文化財として残っている形式としては「文字を遺すための基底材」として用いられていることから、書籍や文字文化に関する歴史を学ぶことも、「羊皮紙」への理解に関連してくることがおそらくご理解いただけるでしょう。そしてそれが結局のところ「紙」への理解(あるいは「本」や「印刷物」への理解)に還ってくることにもなります。

現代からすると当たり前に行われている文字での記録。実際このブログでも「文字」にて情報を伝達しております。この文字での記録はは数千年もの前から発明されると同時に、その「文字」そのものを書きつけるためには、なんらかの支持体(あるいは媒体)が必須でありました。

人類の歴史において、文字の誕生以前には何もないかと言いますとそうではなかったようで。時代性は明確ではないようですが、今から4万年くらい前には、洞窟の壁に何かを描く技術があったといわれています。

最近では道路で遊ぶことが禁じられているので(いえ、我々が子供のころも、道路で遊ぶなとは言われましたが…汗)なかなか見ませんが、実はブログ主は子供のころ、自分の家の前の道路や、あるいは自分の家を囲む塀にチョーク的なもので落書きをしたことがあります(多分、当時のTVアニメか何かでも登場人物がそういうことをしていて、「なるほど!」とでも思ったのでしょうね。苦笑)。そういうことを考えれば、自由に何かが描ける紙がない時に、「固い壁」に向かうのは同じなのねと納得します。

閑話休題。そういった壁画のなかでも年代がはっきりしている最古の洞窟壁画は、フランス南部にあるショーヴェ洞窟のもので、今から約3万2000年前に描かれたとされています。洞窟壁画の多くは、動物の姿を写実的に描いており、狩猟のシーンも少なくないようです。

当時の人類は、ある程度の人数で集団生活を営むと同時に、狩猟生活をしていたんですね。現代のように貨幣があり、貨幣さえあれば、貨幣と引き換えになんでも手に入れられる世の中ではないですから。「人類」として「繁殖」し、「老いていく」人生を考えたときに、「狩猟」生活をする限りは集団生活が正しいわけです。で、その集団での狩猟における効率を高めるためには、獲物を集団によるチームワークにて追い詰める必要があります。集団で何かを追う時というのは、例えばサッカーでもバスケットボールでもそうですが、「声出せ、声!」とよくいいますよね(^^)。仲間内で声を掛け合って、目的を果たす必要がある。ですので、狩猟において、仲間内でそこで手段内で音声会話による情報伝達システムがあったとされています。

音声会話による情報伝達システムって?と思いますが、非常に単純にいえば、自他の区別をしたり、個人を示す呼び名(名前)が、文字の前にすでに存在したと考えられているようです。

さて、ところが、狩猟時の人の配置、役割分担などは音声だけでは伝えにくい点もあります。これもよくスポーツでの練習や会議みたいなときに、監督などがホワイトボードを使って、「こういう場合はAさんがこっちいって、その間にBさんがあっち行って…」みたいな説明をするので「ああ!」と思われると思うのですが、思いのほか、言葉だけ、言語だけじゃ伝わらないことって多いんですよね。そこで、会話(言葉、言語)を補佐するものとして、絵画が使われるようになりました。しかし、いちいち写実的な絵を描いていては時間がかかります。

ですので、時代が下がると徐々に絵の簡略化がなされていきます。例えば動物は輪郭だけの線画となり、人の形は省略されて棒人間ように表現され、同時に弓矢や槍のような狩猟につかった道具も描かれていくようになります。

そんな中で、文字の発祥がいつなのかはよくわかっていません。紀元前4000年から紀元前3000年ごろには体系としては完成していませんが、何かを表すシンボルのようなものが生まれていたのは確かなようです。例えば、酒瓶(かめ、壺)などの封に、「俺のもの!」みたいな個人の所有物であることを示すサインのようなものが刻まれていたのが発見されているようです。冷蔵庫の中のプリン、あるいはなんというジャイアニズム…(笑)とは思いますが(いえ、「お前のものも俺のもの」とまでは書かれていないでしょうから、ジャイアニズムではないのか)、そういう必要性があってものごとは発展(簡易化など)されていくんですよね。また、そういう意思表明が文字の始まりとも考えられているようです。

…さて、全然話が進んではいないのですが、本日すでに結構長く書いておりますのでここまで。

こういうお話にもしご興味がございましたら、いろんな本がすでに書かれ出版されておりますので、是非書店や図書館にてお求めください。文字という身近というか、現代において不可欠なものに関して、知らなかったなぁというため息をついてしまいます(^^;)。

というわけで最後まで読んで下さりありがとうございます。

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