ここしばらく紙の記事を書いていますが、11回目の記事からその中でも羊皮紙の話を書いております。
なお、11回目の記事や12回目の記事でも書きましたが、羊皮紙は一般的には「紙」ではない、ということを前提としてご理解ください。
なお、当記事を含む紙シリーズの記事に関してですが、私自身留学中およびその後に個人的に興味があって調べた内容ではありますが、ブログの内容ですのであくまでもレポートや論文に利用するほどにうのみになさらないようお願いします(ま、通常ブログなどはレポートや論文の参考文献にはなり得ないので、その旨をご理解いただければ、当ブログ全体をそのような利用はしないとは思いますが…)。
また、当ブログなどでご興味を持っていただいて、自ら文献などを調べてみよう!という気持ちになっていただけるとすごく嬉しく思います。
ここまで羊皮紙あるいはその周辺に関して書いておりました。また、先の記事ではどのような動物が羊皮紙の素材として使われているかをお話しました。ですのでこの記事ではちょっとだけではありますが、それら、羊、山羊、牛といった各動物の皮からなる羊皮紙の特徴についてお話します。
羊の皮を素材とした羊皮紙の特徴
まずは日本語で「羊皮紙」とある通り「羊」に関して。
羊の皮はヨーロッパ全土で用いられました。羊の皮は薄くて柔らかく、表面はなめらかという手触りとしての特徴があります。ただし、羊の皮膚には脂が多く含まれていることから、羊皮紙への加工・製造には手間がかかる傾向があるそう。また、この皮に含まれる脂ゆえに、文字などを記す基底材としてはインクが乗りにくいというデメリットがあったようです。
なお、羊の羊皮紙の表面の方が耐水性の傾向があり、それに対して裏面は吸水性を示す気候があるそうです。羊皮紙を用いた写本などでは紙と同様に表裏ともに記載がなされるのですが、先述の特徴から、羊の皮からなる羊皮紙においては表面の方がインクが乗りにくく、落ちやすい反面、裏側はインクを吸うこととなり、インクが落ちにくいと言われています。
とはいえ、実際羊皮紙をごらんになると(特に写本の一葉になっている羊皮紙であるとなおさら)ご理解いただけると思いますが、羊の羊皮紙の表裏を当てるのは困難です。
このような羊の皮による羊皮紙は厚みのあるものは封筒や地図、公文書に用いられ、対して薄い羊皮紙は本(写本)に用いられました。
特に羊の羊皮紙が公文書として使用されたという話は、羊皮紙工房 – 羊皮紙工房 (youhishi.com)の八木健司氏から伺い興味深かったのですが、これは公文書偽造防止なのだそう。
羊の羊皮紙の繊維は、他の動物の皮の繊維よりもからみがゆるい性質があるのだそう。それゆえに、羊皮紙に書かれた文章を削り落として偽造しようとすると(羊皮紙の時代は、紙と鉛筆の時代ではなく、インクでの筆記であったため)ナイフで削ると羊皮紙の表面がぼさぼさになってしまいます。よってこの「表面のぼさぼさ化=羊皮紙の表面を削った証拠」ということになるため偽造が明確になったり、あるいはナイフで削ったところだけインクが乗りにくくなる傾向があることから、そこで「あっ」と偽造に気づくようです(現代でも紙にインクで記したものを【修正した】という証拠なしに修正するのは困難ですよね。修正テープとか、まるわかりですし。汗)。
こういう話を聞くと、昔も文書偽造があったんだー(まぁ、当然といえば当然なのですが)と思うと同時に、それに対する対策もあったということに関心してしまいます。
山羊の皮を素材とした羊皮紙の特徴
羊の羊皮紙に対し山羊皮はどうかというと、表面の色が純白に近いものが多いです。
また、おそらくいかなる方も一度山羊皮をご覧になれば、羊や牛と混同することはないだろうと思います。なぜなら山羊皮からなる羊皮紙には非常に特徴的な毛穴が視認できるからです。この毛穴、ただ肉眼でも目視できるほどに目立つというだけでなく、3つの穴がセットになっていることから、本当に特徴的なんです。
なお、先の羊からなる羊皮紙において、ヨーロッパ全土で羊の羊皮紙が用いられたとは書きましたが、イタリアの写本の多くは山羊皮でできているそうです。写本の一葉の基底材だけで、もしかしたら場合によっては出身地域の予測ができる場合もあると思うとわくわくしますね。
また羊皮紙の発祥地とされるペルガモンでも山羊の羊皮紙が主流であったといわれています。
本日のまとめ的なもの
こういう動物毎の羊皮紙の特徴に関しては、本当に百聞は一見にしかずだと思います。
ブログ主は別段上記の羊皮紙工房の回し者でもなんでもありませんが(別にマージンなどがもらえるわけでもありませんし。^^;)、こういうところで羊皮紙が気軽に購入できますので、もしご興味がありましたら、各種実際購入してみて比較してみていただきたいなと思います。特に山羊皮は本当に特徴的ですので、「ああ」とご納得していただけるかなと(^^)。
本日はすでに長く書いておりますので、牛の皮についてはまた次回に。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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