下地層に関して:下地を構成する素材の一つである「粉体」である「顔料」あるいは「体質顔料」に関して考える①

修復を学ぶ

現在、絵画(主に油彩画・テンペラ画)の構造についてお話しておりますが、「下地層(地塗り層)」のお話が長く続いておりますね。

この下地に関しては結構重要ですので、もう少々続きます旨ご理解ください。

また、このブログでお話していることは、ブログ主が実際に大学の授業でもお話していることですが、ここからお話する「下地層」の詳細なお話になると、とたんに理解度が減ってくるお話になりますので、できるだけこちらもわかりやすくご説明しようとは思うのですが、可能であれば、いろいろな修復関連の本などを片手に読んでいただけるとよいのかと思います(汗)。

下地に関するこれまでの振り返りとして

まず「下地層(地塗り層)」に関するここまでの振り返りをすると、代表的なものとして「水性地(吸収地)」「油性地(非吸収地)「エマルジョン地(水性地と油性地の両方の性質を持つ)」があること。

次に各下地がどういうものからでいているかというと、

「水性地(吸収地)」は「体質顔料(例:白亜、石膏)」+「膠水(などの水性接着成分)」、必要によって「白色顔料(例:亜鉛華、酸化チタニウム)」が入っている。

「油性地(非吸収地)」は「白色顔料(例:鉛白、亜鉛華、酸化チタニウム)」に必要に応じて「体質顔料(例:白亜、石膏)」が加わり、それに接着成分として「乾性油(あるいは加工乾性油)」が含まれている。

「エマルジョン地」は、接着成分として「膠水(などの水性接着成分)」と「乾性油(あるいは加工乾性油)」が混合されており、あくまでも膠水と乾性油の混合利率にもよりますが、水性地と油性地の両方の性質を持つことが特徴です。

過去の記事でも少し書きましたが…、下地を構成する素材である「色」に関わる「粉体」に関し

さて今回話題としたいのは、「水性地」と「油性地」の「粉体」の部分です。実のところこれに関しては過去の記事でも少しお話しておりますが、もう少々詳細にお話したいので、再度ひっぱり出しております。

繰り返しますが、「水性地(吸収地)」の場合は「体質顔料」に必要があれば「白色顔料」

対して「油性地(非吸収地)」の場合は「白色顔料」に必要に応じて「体質顔料」、という形となっています。

極論をいえば、「水性地(吸収地)」においては「体質顔料」と「膠水」で下地になりますし、「油性地(非吸収地)」においては「白色顔料」+「乾性油」で下地になります(ブログ主が教員だったころ、まさに非常にシンプルなレシピで下地を作って模写しておりました)。

おわかりいただけるでしょうか?ここで疑問に思っていただきたいのは「なぜ水性と油性で粉(主体となる粉)を変えなければならないか」ということです。

さらに振り返り的ではありますが、「顔料」と「体質顔料」の違いとは?

この記事で、まず理解が必要なのは、「体質顔料」と「顔料」って、何が違うの?ということです。過去の記事にも少し書いておりますので、なんだっけ?という場合は是非振り返りとして読んでみてください(汗)。

この上でややこしいのは、西洋絵画保存修復あるいはアーティストとしての西洋絵画家の間の認識と、もしかしたら表具保存修復関係あるいはアーティストとしての日本画家の間の認識が微妙に異なるかもしれない、ということです。なぜなら西洋絵画関係は絵具の接着成分として「乾性油」、すなわち「油」を使うことが前提ですし、対して日本画関係は絵具の接着成分として「膠」を含む「水性」のものを使うことが前提だからです。

ですので、ここで申し上げる話はあくまでも西洋絵画(油彩画・テンペラ)における基本概念であって、日本画保存修復においては、もしかしたら修正が必要かもしれない部分がある旨、先にご理解いただいてお読みください。

さて、まず体質顔料というのは、「油絵具の顔料としては、自立した顔料として使用することができない白い粉末」を指します。油絵業界での二大体質顔料が「石膏(硫酸カルシウム)」と「白亜(炭酸カルシウム)」となります。

ちなみに炭酸カルシウムに分類される素材は他にもいろいろあり、また実際絵画の下地や修復素材に使用されているものが複数ありますが(あるいは逆に一般的な絵画に使用されていない炭酸カルシウムもありますが)、油彩画において最も使用される代表が「白亜」となります。ちなみに日本画でよく使用される「炭酸カルシウム」は描画材料(顔料)としての「胡粉」ではないかと推察します。

西洋絵画あるいは西洋絵画保存修復で使われる「体質顔料」における役使用用途

さて、「石膏」や「白亜」が代表するような油彩画(あるいはテンペラ画)業界における体質顔料ですが、これらはどのような役割として西洋絵画あるいは西洋絵画保存修復の業界で用いられているかといいますと、大きく3つ考えることができます。

  • 絵画の下地の素材として
  • 絵具の乾燥剤、増量剤、合成顔料のためのボデイとして
  • 主に充填剤など、修復における素材として

以上が挙げられます。

「1」に関しては今までずっと「下地層(地塗り層)」のお話をしていたので、「知ってるるよ」と思われるでしょうし、逆に「3」は今後「修復」のお話をしていく際に、改めてお話できたらと思います。

「2」に関しては、「絵具」の「色の役割」として、ではないことが見て取れると思います。あくまでも乾燥剤や増量剤というのは「添加物」なんですね。我々の身近にある市販品の原材料名によく出てきます。加えて言えば、もし「色の役割」をしているなら、「着色剤」「着色料」という名称ででてくるはずですが、そうでないこともお気づきいただけるかと思います。そういう意味で、「油絵具」の下地に「体質乱行」が加えられる際に、「色」の役割をしていないことが薄々感づかれるのではないかと思います。

また、「乾燥剤」や「増量剤」として「体質顔料」を混合できる色材として「白色」と限定していないのもお気づきでしょうか?つまり、白色の絵具であろうと、黒色の絵具であろうとも乾燥剤や増量剤として使える、ということです。一般的に乾燥剤に使うのは「炭酸カルシウム」のほうかなとは思うのですが、見た目として「白色」の白亜を黒色顔料に混ぜて油絵具を練っても、「グレー」にはなりません。「黒い絵具」ができます。

これが理解できると、「水性下地(吸収性地)」が「体質顔料」+「膠水」で、「油性下地(非吸収性地)」が「白色顔料」+「乾性油(あるいは加工乾性油)」であり理由が容易に理解できます。

というところで本日はすでに長く書きましたので、また次回にこの続きをご説明させてください。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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