直近の記事にて光学調査の中でも「X線(レントゲン)写真」のお話をしているときに、ちょうど「X線調査」の話がでていることや、大学院の学生さんの研究であるということで、非常に面白いお話だなぁということで、今回取り上げてみました。
是非オリジナルの記事をご覧になってみてくださいね(神戸新聞NEXTさんより:なぜか名産だった模造サンゴ「明石玉」って? 東京の大学院生が卒論で取り上げ研究加速、世紀の大発見か (msn.com)2022/12/18参照、外部リンクですので自己責任にてご覧ください)。
この論文は、2022年現在東京学芸大学大学院で工芸や文化財を研究する鈴木琴那さん(23)によるものだそうで。高価なサンゴの代わりに、別の材料でサンゴに似せて加工した装飾品である明石玉装飾品に関するものなのだそう。現在は作られていないようですね。
また、そもそも「何をもってして明石玉とするのか」といった定義がないというところから始まっているところも、まさに混沌としていて、興味深い反面、研究している方にとってはいろんな困難があるだろうなぁと思います。
また同時に個人的に思ったことですが、自分の手元にサンゴ製のアクセサリーなどがないので、オリジナルのサンゴ製の装飾品の特徴がぴんをこず、その上で模造品というがどこまで似せられているのかなぁなんて、思ってみたりもしました(そもそもにサンゴ自体が天然のものですので、工業製品のように、色艶の一様な特徴というと難しいのかもしれないとも思いつつ)。また、記事を読む限りどうも時代の変遷に従って、明石玉の製造における技法材料が異なるようですので、その「模造品」としての出来栄えも気になってしまいますよね。
人類の歴史あるあるで、当初非常に質が高く、高価な素材というものが当然尊ばれて色々な材料として使われる反面、その素材の人気に半比例して手に入れにくい素材であることで(手に入れること自体は簡単でも、良質な素材はなかなか手に入らないこともあるでしょうし、貴重品で高価であることもあるでしょう)、「代替品」が作られていきます。「代替品」はやはり「代替品」ですので、本来の素材を超えられない部分があるとは思いますが、逆に「代替品」だからこその良さもあるとも思うんですよね。
絵画の場合ですと、例えば絵具の青色の顔料の素材として「ラピスラズリ」という、いわゆる石が使われていたことがあります。非常にきれいな青色の石なのですが、中性・ルネッサンス時代には、高貴な顔料として時には「金」と同じ値段で取引された顔料です。
しかし、この顔料は高額なだけでなく、そのきれいな青い色を保った状態での使用も難しい顔料でした。
そうすると低価格で同じ色の顔料は作れないかとか、あるいはせめてキレイな青い色を、面倒な方法を使わずとも保ったままで彩色できる顔料は作れないかなどを人間は考え出します。
人類のあらゆる「発明」は、だいたいこういう発想からくるのですが、凡人であるブログ主は感心するばかりです(^^;)。
さてこういった努力のの結果として19世紀初頭に、この顔料の組成が分析されて、同じく19世紀前半に化学合成に成功。その翌年に工業生産されるようになります。その結果、現代でもその色味の絵具チューブが、一般市民である我々でも購入できるお値段で製造販売されています。その名も「ウルトラマリン」という名称をもってして。よもや金と同じお値段の絵具なんて、一般庶民には購入できませんが、模造品が合成できるようになったおかげで安価に絵具チューブが購入できるんですね。これも過去の人々の努力のたまものですので、ありがたいばかりです。
オリジナルの「代替品」が作られる場合、その理由や、その「代替品」の技法材料の変遷なんかは、歴史や当時の流行や、あるいは化学の発達など、場合によっては思わぬものとの結びつきがあるわけですので、「ただ代替品の研究をしている」というだけには終わらないはずです。
また、「現在作られていない」という「なぜ」も残っていますので、こういう研究というのは、面白いなぁと関心をもってしまいますね。
ちなみに大学で教鞭をとっていた際は、「自分の研究の意義が見いだせない」という大学生をちらほら見たのですが、こうやってニュースにまで取り上げられる論文なんて、そうそうないです。ブログ主だって論文書きましたけど、ニュースになんて取沙汰されてないです(苦笑)。
でも、ブログ主は自分の「楽しい」とか、「自分が知りたいから!」という自己満足で研究をやっていましたし、それでいいんだと思っています。だって、研究って、「自分が知りたいから」というのが出発点であって、「他人に評価されたい」が出発点ではないからです。「他者の評価」は思いがけないおまけです。自分が納得できればいい。
思えば時期的に論文の締め切りくらいの時期ですからね。大学生、大学院生の方々はふんばりどきですね。頑張ってほしいです。
というわけで、興味深いニュースを見かけましたのでまとまりがないですが雑記まで。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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