【用語】顔料に関する概要(ベルギーでの大学での授業Ver.10):昔の主要な顔料4(赤色顔料:シナブルあるいはヴァーミリオン)

用語

9つ前の記事より、ブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となりますが、「顔料」というものを理解するために、用語の勉強として記事にしております。過去の記事もよろしければご覧ください。

また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分があります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。記事の最後にはオリジナルのプリントの文章を付けておりますので、翻訳ではなくオリジナルを確認したいという方は是非ともそちらもご確認ください。

現在昔の主要顔料について、あくまでもかいつまんだ説明のみを記載しまいます(海外の大学時代の、1年生の前期に受けた授業のプリントの翻訳です)。直近の記事までは青色顔料を対象としておりましたが、本日からは赤色顔料が対象となります。

プリントの内容:赤色顔料1:シナブル(辰砂)とヴァーミリオン

シナブル(辰砂)とヴァーミリオン

下塗りに用いられる非常に生き生きかつ不透明な赤色の顔料である。しかし欠点として乾燥作用のなさが挙げられる。

屈折率は大変高い:3,1

吸油量:25%

あらゆる結合剤の中でこの顔料は安定しているが、再結晶の過程によって黒色の硫化物に変化しうる

  • 天然の状態で存在する硫化水銀:シナブル(辰砂、水銀の鉱物)、粉砕、洗浄し、加熱して不純物を除去する。ギリシャでは紀元前6世紀から知られており、おそらく同じく以前に小アジアで知られていた(中国にて発明され、アラブ人によってヨーロッパにもたらされた《約8世紀ごろ?》)
  • 硫化物に関することであるが、他の顔料とは何ら反応を引き起こさない
  • ヴァーミリオンと合成シナブルの製法は、中世の初めから知られていた(チェンニーニはそれについて語っている)。水銀とイオウの混合物を溶かしながら得られた黒い生成物を赤色がん用に至らせるまで昇華させる(気体から個体へ、【液体状態や逆の変化を経ずに】直接変化する)。

おそらく中世のアーティストたちは合成品を好んで用いていたようです。800年頃Mappae Chaviculaの中で合成の調整の記述が2つある。

プリントの本文

Rouge

Cinabre et Vermillion

pigment d’un rouge très vif et opaque utilisé en sous-couche mais inconvénient : pas siccatif.

Indice de réfraction très élevé:3,1

Prise d’huile: 25%

Pigment stable dans tous les liants mais peut se transformer en un sulfure noir par un processus de recristallisation.

  • sulfure de mercure qui existe à l’état naturel: le cinabre (minerai de mercure), broyé, lavé et chauffé pour évacuer les impuretés. Connu en Grèce dès l 6ème siècle avant J.C. et peut-être même avant en Asie Mineure (procédé inventé par les Chinois et arrivé chez nous par les Arabes 【vers le 8ème siècle?】)
  • Malgré qu’il s’agisse d’un sulfure, il ne provoque aucune réaction avec les autres pigments.
  • le vermillion et un cinabre artificiel dont la fabrication était connue dès le début du Moyen-Age (Cennini en parle): en faisant fondre un mélange de nercure et de soufre et en sublimant (transformation directe d’une vapeur en solide sans passer par l’état liquide et transformation inverse) le produit noir obtenu pour arriver au pigment rouge.
  • Apparemment les artistes du Moyen-Age préféraient utiliser le produit artificiel. Il existe deux descriptions de la préparation artificielle dans la Mappae Clavicula vers 800.

本日のまとめ

シナブルとヴァーミリオンは、天然か合成かといった違いのみの同じ硫化水銀からなる赤色顔料です。

面白いことにこのシナブルとヴァーミリオンにおいては、人工物・天然物に関わらず、化学的にも物理的にも光学的にも差がなく、絵画層にあるヴァーミリオン的な色に関し、天然の顔料なのか合成の顔料なのかを当てることは全くできないことが多いそうです。

こういうものが将来的にもっと科学技術などの発達によってはっきり区別できるようになるのかななどと考えると、もっともっと古典作品に関する詳細が明白になるのになぁと夢が膨らむ感じですね。

というわけで本日はここまで。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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