今回は全くの雑記で、昔表題の本を読みまして、興味深いなぁと思うと同時に、美術業界でも同じじゃない?と思ったことを書いてみようかと。
そもそもに「オーケストラ楽器別人間学」というのがどういう本かと言いますと、オーボエ奏者かつ指揮者をされている茂木大輔氏の書かれたご著書です。オーケストラという集団にずっと属していらっしゃるからこそ、そのオーケストラを構成するメンバーの性格や人間性みたいなものが、なんとなくではあるものの、「その演奏する楽器の特性、役割、機能」に合ったものになっているのではないかという、あくまでも純然たる著者の見解に基づいた本です。
ブログ主もある程度は楽器を習っていましたので、面白く読んでいたのですが、これはオーケストラという集団に限ったものではないなぁと思った次第です。もっと言えば、自分自身が「油絵科」という場所で油絵を描くことを学んでいたころに他の専門、例えば日本画や彫刻、デザインなどとは我々の集団は雰囲気・臭いみたいなものが違うなぁと感じてきたことと同じことが書かれているように思いました(^^)。あるいは大学の中の他の専攻なんかもそうかと思うんですよね。医療系とかでも、内科と外科と眼科と耳鼻科と美容整形科だと、違う性格の人が集まりそうだと推察したり。外国語学科でも、スペイン語と中国語とアラビア語とミャンマー語とかだと、それを専門にやっている人の見た目とかも違いそう(全くの偏見ですが)。
ただ、油絵というのは日本という国からすると外来美術を輸入したもので、その日本での定着の歴史というはなかなかややこしいといいますか、すんなりといったものではないことから、日本における油絵というものの立位置自体が、輸入国日本と本家本元のヨーロッパでは全然違うよなとは、ブログ主は思っております。
ヨーロッパでは「絵画」と言えば普通に「油絵」をはじめとした「洋画一般(こういう言い方も変ですが)」であって、美術の中の花形ですよね。
でも日本においては、特に美術系大学に行くとわかりますが、「絵画」というカテゴリーは「日本画」と「洋画(あるいは油絵)」に分類されるところから始まり、前者は油絵科出身者のやっかみではありませんがいわゆるサラブレッド的な印象ですし、後者はなんとなく薄汚いことがむしろ誇りのようなアウトロー的印象があります(ブログ主が十代末から二十代頭は特にそうでしたが、近現代だとこの差は幾分埋まっているかもですね)。
古い漫画になりますが、少女漫画で一条ゆかりが作の「有閑倶楽部」に、日本画家を父に持つ娘が主人公の一人としてでてくるのですが、「日本画」関連の印象というのを大げさにするとああいう印象だなぁと(苦笑)。さすがに大学時代の同級生の日本画科の学生でああいう「ザ・日本人形」みたいな人はいませんでしたが、女の子の日本画科の同級生の持ち物が普通にブランド品だったりして、「お金がない」「貧乏」という印象のない学科だったなぁと思います(すでにとっくの昔にバブルが崩壊しているにも関わらず)。ですので、日本画の学生は総じて、個性的というよりも、パッと目立つわけでははいけれど実は…的な、主張しすぎない正統派な印象です。
これに対し、日本の油絵科の学生というのは、なんというかちょっと影がある。場合によってはひねくれている。着ているものが「作業用つなぎ」。学校に出席していない理由がお金関係(バイト、畑、漁)であることが多い、というのがブログ主自身の経験による印象ですかね。学費や一人暮らしの生活費を自分で賄っている学生の利率が美術系の中では一番高い学科じゃないかな(ブログ主が学生していたころは、なかなか美術系、とくに油絵科への親の納得というものが得にくい頃でしたから)。お金がない割には、徹底してバイトしない同級生もいて、だから即物的に食べ物を得るために「畑」とか「漁(釣り)」なわけですが(笑)。なんていうんでしょうね、一見バンカラそうなんですけど、行動原理を考えると中身の繊細さ、悪く言うと神経質さがわかるようなそんな人種が多い気がします。
彫刻関係の人は、おおらかで集団行動の好きな酒好き、という印象です(苦笑)。男性は(少なくとも知人や仕事関係としては)やわらかい印象、女性は姉御肌はじめお姉さん的印象を受けることが多いかな。とはいえ「おおらか」は「いい加減」とは異なります。こういう美術関係の人は道具を大事に扱うことが仕事の第一歩ですが、彫刻は刃物を取り扱ったりしますし、その刃物の状態が作品の出来を左右したりもするので、道具の扱いとかお掃除関係とかの管理関係はすごいです。
デザイン科の場合は、商業デザインなのか、工芸系なのかをはじめ、細かい専門分けで異なるのですが、総じていえば「おしゃれ」さんが多い印象です。とはいえ「流行を追う」おしゃれじゃなくて、「ああ、この人には確かにこういうのが似合うな」という納得感のある、「その人に似合うね」っていうオシャレさんの集団の印象。まぁ、そういう集団の中にいるから、お互いにアドバイスしあったり、磨きがかかるんだろうなと思います。
こういう印象は、文化財保存修復でもそう変わらない気がしています(ただし、文化財保存修復の場合、「工芸」という分類はあっても「デザイン」という分類はないですが…)。あと、文化財保存修復の場合は上記に加えて「保存科学」という理系がでてくるところは異なりますね。
保存科学の人の印象としますと、こんな偏った感じの美術業界で考えますと常識人という印象です(苦笑)。普段から一番スーツとか着ている印象ですし、なんせ理系で賢いですから(^^)。ただ、理系を専門とする割に、保存修復の業界内で関わる人間の大多数は理系専門ではないので、仕事上ご苦労が多いのかもしれません。「理系の話」で拒否反応を示す人間相手に、きちんとコミュニケーションが取れるためなのか、話し方の柔らかい方、平易な言葉を選んで話す方が多い印象です(最近よくある無駄にカタカナでしゃべって、相手が理解不能に陥ると相手のせいにするような話し方はしません)。ただ、賢さが駄々洩れると「変」というところにも行きつくのか、特に男性の保存科学の方の場合、なかなかないこだわりのある方もいらっしゃるので、傍から見ている分にはそのギャップが面白くもあります。
とはいえね、最近の学生さんを観ていて、極端に「ああ、あなたは●●科のが学生ね!」って印象はあんまり持たないかな。ブログ主が大学で教鞭を持っていたころの期間の半分はコロナの関係で学生が殆ど学校にいなかったこともあって、学生観察なんかも殆どできなかったですからね(とほほ)。
とはいえ、音楽関係の学科や美術関係の学科に関わらず、教養科目とかの間はいろんな学科の学生と交わるわけなので、いろんな視点でいろんな人を観察してみたり、話のネタにこういうことを話してみても面白いのかもねーと思いつつおります。勿論、同一学科の学生が、型にはめたように皆同じ性格だったり行動様式を持つわけではないので、個々の個性をお互いに大事にしてあげながら楽しんでほしいです(^^)。
というわけで本日はここまで。最後までこんな戯言を読んで下さり、ありがとうございます。
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