毎度毎度同じシリーズ内で同じ文言を繰り返してはおりますが、前置きとしまして、この用語シリーズはブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となります。西洋絵画を構成する素材の一つである絵具を理解する足がかりの一つとして記事にしております。ただ、もし文化財保存修復を学びたいなーという方が読まれている場合は、こういう記事のみをうのみにするのではなくて、いろんな文献を比較参照してくださいね(^^)。
また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分、あるいはわかりにくいがあります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。顔料や絵具に関しましては、現在やっている【用語】シリーズに関わらず、すでに過去の記事で何度か書いている部分もありますので、そちらもご覧いただけるとわかりよいのかな…と思いつつおります。
本日はモノテルペンあるいはセスキテルペンの中でも「アスピックオイル」および「ラベンダーオイル」についてです。
耳にしたことがある、とは思っても、使ったことがあるという方はあまりいない…のかな…と思います(ブログ主は使ったことはありません)。かつては使われた素材のようですが、逆にどうして現在リンシードオイルやテレピン油のように使われていないのかなどを考えるのに面白い素材かもしれません。
というわけで本日の記事をどうぞ。
プリントの本文:結合剤と希釈材19:モノテルペンおよびセスキテルペン2:アスピックオイルおよびラベンダーオイル
アスピックオイル(スパイクラベンダー)/ラベンダーオイル
- 大ラベンダーの花から抽出
- 原則として雄のラベンダーの蒸留物のみから得られる(ラベンダーオイルとの違いは、メスのラベンダーからの蒸留物からえられることである)
- 大変強い香りを持つ色の薄い、透明な液体
- 油の良い溶剤でると同時に、多くの天然樹脂の優れた溶剤でもある
- アスピックオイル(スパイクラベンダーオイル)は絵画材料に可延性と糸のような非常に心地よいある程度の良質なペーストを与えるとともに、天然呪医を主成分とする美しいワニスを与える
- かつては画家によって十分に使用されていたようだ
- 重大な欠点:蒸発することが極めてゆっくりである。したがって、この油が存在する場所において長期的に塗膜を溶かす
プリント本文
Essence d’aspic / Essence de lavande
- extraite des fleurs de la grande lavande
- Obtenue en principe par la seule distillation de la lavande mâle (à la différence de l’essence de lavande qui est obtenue par la distillation de la lavande femelle).
- Liquide clair et transparent à l’odeur très forte.
- Bon solvant des huiles et un excellent solvant de nombreuses résines naturelles.
- L’essence d’aspic confère aux matières picturales une certaine qualité de pâte, à la fois ductile et filante, très agréable, elle donne de beaux vernis à base de résines naturelles.
- A, semble-t-il, été assez employée autrefois par les peintres.
- inconvénient important: elle s’évapore extrêmement lentement et elle détrempe de ce fait durablement les films dans lesquelles elle est présente.
本日のまとめ
ラベンダーから採れる精油ですね。大きくはモノ・セスキテルペンの一族に入るので、先の記事で書きましたテレピン油と似た性質があるようです。でも、テレピンと比較すると揮発性が弱いようですね。ちなみに香油のラベンダー油とは別物のようです。
油絵を使ったことがある方はご理解いただけるかと思うのですが、油絵で絵を描くと、「早く乾いてほしい(固化してほしい)」という欲求がでる反面、「ずっとべたべたしていてね」とは思わないものです。ですので、精油などは早急に揮発してほしいでしょうから、似たような使い方をするテレピンとアスピックなどでは、テレピンが有用と画家さんたちが軍配を上げたのでしょうね。
また、テレピン油を絵画の保存修復では決して使わないのと同様に、アスピックやラベンダー精油を絵画の保存修復で使用することもありません。そもそもに揮発しにくい(ずっと作品上に留まる)素材というのは、作品に与える影響を考えると怖いので…。
とはいえ、かつてこういう素材を使っていたことも…と思うと、面白いですよね。
というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さりありがとうございます。
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