文化財保存修復におけるカメラの話:F値①

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事にてどうしてカメラのお話をするのかといった概要のお話をしました。また、2つ目の記事から少しずつカメラの話をしております。くわえて2つ前の記事からは文化財関係の写真撮影をする上で知っておくべき専門用語の一つであるISO値に関してお話しました。そして直近の記事では撮影において重要な露出(露光)のお話をしました。

よい写真を撮影するには、「ものを見る」原理と同じに「光」が重要となり、また適正な光をもってして撮影するためには適正露出(露光)が大事になります。「露出」を聞くと、なにやら犯罪的ななにかを感じるかもしれませんが、そういうことではないですよ(^^;)。この適正露出に関わるのがすでに説明しているISO値、そして絞りやシャッター速度の関係なんですね。

ただし、文化財保存修復の中でも絵画関係においてはISO値は100で固定していることが多いので(ISO値は数値が大きくなるにつれて、逆に画像にノイズが入る傾向があるためです。最大限作品の適正情報を得るためには、ノイズのない写真が重要です)、変動するのは絞りやシャッター速度であることが多いですね。

と、ここまで書いておりますが、ブログ主は別段カメラの専門家ではありません。もしかしたらカメラの専門家の方から見たら「何いうてんねん」という内容があるかもしれません(汗)。もしそういうのがあるよ~とお気づきの方がいらっしゃったら、色々教えていただけるとありがたいです(ぺこり)。

というところで本日の本題に入ります。

F値(絞り値)とは

F値とは、「レンズから入る光の量を表したもの」で、別名「絞り値」といいます。

F値は「焦点距離÷レンズ口径」で表されます。

「絞り」はレンズから入る光の量を調整する部品で、F値(絞り値)というのはこの「絞り」をどれくらい開けるか、閉めるかというのを数値化したものです。

…ややこしいですね(汗)。

ここで少し直近の記事のおさらいをしてみるのですが、先の記事の「露光(露出)」に関して、文化財保存修復における撮影では「作品の正しい情報が伝わる」ことを大事にして適正に「露出」することが大切であるとお話しました。

「露出(露光)」はすなわちイメージセンサー(撮像素子)やフィルムに光を当てることを言いますが、もっと簡単な言い方をすると、最終的な「写真の明るさ」ともいえるでしょう。この撮影時に求められる光を蛇口からでる水に例えると、喉を潤すのに必要な水量(仮に100mlとする)をコップに入れることを「適正露出(露光)」としたときに、「蛇口をどれくらい開けるか」ということと「どれくらいの時間(秒)蛇口を開けた状態にするか」ということが関わることはご理解いただけると思います。

蛇口の水の場合、蛇口を大きく開けば水は大量に出るため、100mlの水を汲むのに1秒も必要ない場合もあるでしょう。逆に蛇口をうっすらしか開けなかった場合、100mlの水を得るのに数秒必要なこともあるかもしれません。

このお水の例で言いますと、「どれだけ蛇口を開こうか?」というのが「絞り」部分の役割で、「どれだけ開けたのか」を数値化したものがF値(絞り値)なわけです。

絞りをいっぱい開けばその分光は入ってきますし、逆に絞りを絞れば光量は減ります。これに加えてシャッタースピード(蛇口を開けている時間ですね)を調整することで、「必要」とする「光の量」になるよう調節するわけです。光とお水の違いで考えると、お水の場合はコップからあふれれば必要分に調整したり、足りなければ継ぎ足したりできますが、写真の1ショットにおいては「光が多すぎたから減らそう」とか「光が少ないから足そう」といことができません。1ショット毎に適正露光になるよう努力する必要がある点がコップのお水の例とは異なる部分ですね。

絞りの構造

写真というのは、レンズを通った光を一定時間フィルムやCCD(受光センサー)に充てることで出来上がります。

このレンズには光の入り具合を調整できる穴があります。これは猫の目のように大きくしたり小さくしたりすることが可能で、撮影する場所の明るさや条件などによって、穴の大きさを調整することで光の入り具合を調整します。この穴は「絞り羽根」という機構で大きくしたり、小さくしたりしています。

レンズを通った光は絞り羽根を通ることで光の量がコントロールされ、イメージセンサー(撮像素子)に当たります。

この「絞り穴を大きくする」ことを「絞りを開ける」といい、その逆、つまり「穴を小さくしていくこ」とを「絞り込む」といいます。これは写真撮影をする上でよくよく使う言葉ですので、覚えておくとよいですね(^^)。一般的なデジカメなどではカメラが自動的に周りの光や設定などに応じて絞る量を決めてくれているので(オート機能を使うとそうなります。アナログ機能を使うと自分で設定することとなります)、何気なく撮っているふつうのコンパクトデジカメにも実はこの機構が採用されています。   

また、羽根を全く使用していない状態を開放といい、そのレンズにおいて目一杯光を取り込むことができます。真夜中に星空を撮るときなんかは、こういう状態にするんじゃないですかね。

本日のまとめ的なもの

カメラを使った撮影をする際なんかは、本当に「目が見える原理」なんかを理解するとよりよいなぁと思います。いかに「光」が大事かということが再認識されますので。

また、文化財保存修復関係の撮影は「作品」に関する資料としての撮影ですので、「作品(撮影者の表現を大事にしたもの)」ではないということが大事なこととなります。

そういう意味では「写真」を「作品」とした撮影とはちょっと異なるかもしれませんし、でも、「作品(文化財)」を適正に撮影するにはそれなりにカメラに関しての理解が必要であるということはカメラの専門家となんら変わらないよというのがありますし、ちょっとややこしいかもしれませんね(^^;)。

特に中型カメラ以上のものは、なかなか触る機会がありませんので勉強したり、壊さず使えるかが不安だったり、あるいは適正に撮影するのが難しくて本当に嫌になることもあるかと思いますが(まさか文化財保存修復にこんなカメラ操作への理解が必要だなんて思いもしない学生さんが大半ですので)、こういうのも使っていくほどに慣れていくものですので、今期強く諦めず学ぶことが大事だったりしますね。

ブログ主自身、海外から日本に戻ってみたらものすごくカメラがすごいことになっていて(こういうのを見ると日本の恵まれ方を確認します)、すごいカメラについていくのに必死でしたから(笑)。ほんと、日々勉強だなぁと思います。ありがたいことです。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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