文化財保存修復におけるカメラの話:SS値

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事にてどうしてカメラのお話をするのかといった概要のお話をしました。また、2つ目の記事から少しずつカメラの話をしております。くわえて3つ目の記事からは文化財関係の写真撮影をする上で知っておくべき専門用語の一つであるISO値に関してお話、4つ目の記事では撮影において重要な露出(露光)のお話、そして3つ前の記事2つ前の記事、そして直近の記事にてF値のお話をしております。

よい写真を撮影するには、「ものを見る」原理と同じに「光」が重要となり、また適正な光をもってして撮影するためには適正露出(露光)が大事になります。この適正露出に関わるのがすでに説明しているISO値絞り、そしてシャッター速度の関係なんですね。

と、ここまで書いておりますが、ブログ主は別段カメラの専門家ではありません。もしかしたらカメラの専門家の方から見たら「何いうてんねん」という内容があるかもしれません(汗)。もしそういうのがあるよ~とお気づきの方がいらっしゃったら、色々教えていただけるとありがたいです(ぺこり)。

というところで本日の本題である「SS値」に関する続きをお話していきます。

シャッタースピード(SS)とは

シャッタースピ-ド(シャッター速度、SS)とは、光をイメージセンサー(撮像素子)に当てる時間のことです。別名「露出時間」ともいいます。

カメラは普段シャッターを閉じた状態にあるのですが、シャッターを押すと、カシャっと音が鳴った一瞬の間だけシャッターが開き、イメージセンサー(撮像素子)に光を露光(露出)して撮影する、という一連の動きをします。

シャッタースピード(SS)とは、この「シャッターが開いている時間」といった方がわかりやすいかもしれません。

撮影を楽しむ上で、光を当てる時間(SS)と光をあてる量(F値)はとても重要で、時間と量との組み合わせによって写真の出来栄えが決まってしまいます(勿論ISO感度も重要ですが、文化財保存修復における撮影ではISO感度は100で固定されていることが多いので)。光を当てる時間は「シャッター速度」で調整、光を当てる量は「絞り」にて調整します。

明るい場所でシャッタースピードが遅いと、光が入りすぎて撮った写真がまぶしく、真っ白になってしまいます。つまり、いわゆる女優ライト的になります(^^;)。女優ライトとは、「色白に見せたい、しわやシミやくすみは写さないでほしい」という希望を叶える方法です。でも、この方法を使うと、文化財の「本当の姿」というのは写らないのでよい方法とは言えません。細部も写らなくなっちゃいますから。

とはいえ逆に夜の暗い場所でシャッター速度が速いと、十分な光を取り込めず、真っ黒な写真になります。これも文化財の真の姿を撮影する上で適正な写真とは言えません。

ですのでちょうどいい具合の写真にするには、このシャッタースピードを調整する必要があるわけです。

また、シャッタースピードが早いと写真がブレないという良さがあります。しかしほんの一瞬しかシャッターが開かないために、イメージセンサーに光が当たるのがほんの一瞬ということで写真の明るさが暗くなるかもしれないデメリットがあります。これらはライティングや絞りなどで調節することになりますが。

逆にシャッタースピードが遅いと、撮った写真がブレてしまう危険性があります。ただし、三脚を使えばこの懸念も解消することができます。またシャッタースピードが遅いということは、イメージセンサーに光が当たる時間が長いということになるために、写真のデキとしては明るい写真ができます。ですのでむしろ光量過多に気をつける必要性があります。   

先の記事にて「F値の一段絞り、一段開け」という話をしましたが、これはシャッタースピードにも言えることです。写真を撮る上で大事なことは光の量を適量にすることであり、かつその調節をする際に重要な役割をするのが絞りとシャッター速度である限り、F値の際はシャッタースピードを固定した場合で考えましたが、逆にF値を固定する方法もあるわけです。その際に実施するのが「一段早く」あるいは「一段遅く」シャッタースピードを調整することです。

シャッタースピードにおける一段もF値と同じように考えていただいて、隣り合う数字を一段としています。

自分が「今の写真のシャッタースピードが最適だな」と思うところより、一段早くする、つまり数字が小さい状態に設定すると、先の適正写真より暗めの写真ができあがります。数字が小さいということは、すなわちそれだけシャッターが開いている時間が短いということだからです。

逆に適正状態の写真より一段シャッタースピードを遅くすると、適正写真より明るめの写真ができあがります。シャッターを開けている時間が適正写真より長いことより、イメージセンサーにより光が当たるため、光の量が多くなるためです。 こいいうのは話として聞くと非常に難しく聞こえるかもしれませんが、ある種慣れなので、何度かやれば経験として理解がいくことかと思います。

なぜ三脚を使うのか:手ブレ対策

通常、文化財保存修復関連でノーマル写真、側光線写真、赤外紫外などの写真を撮影する場合、三脚を用いて写真を撮ります。手でカメラを持って…ということを全然しないわけではありませんが…。

これは「手ブレ」をさせないためです。「手ブレ」はシャッタースピードが「1/焦点距離」秒以上で発生すると言われています(例:カメラの焦点距離として50㎜のレンズを使用した場合、「1/50」秒以上でブレる)。

また、意外と思われるかもですが、シャッターを切るときの振動でもぶれたりします。特にシャッタースピードが遅い時なんかはそうです。

単純にシャッタースピードを速くすればいいかというとそういう話でもなく(シャッタースピードを速くするために、F値を解放すれば被写界深度は浅くなりますし、ISO感度を上げればノイズがでる)。

また、紫外線写真の場合はどうしてもシャッタースピードが遅くなってしまうので、カメラを手で支えた状態での撮影は不可能となります。

こういう手ブレを押さえるために、三脚を使用したり、写真館などではシャッターボタンを直押しするのではなく、シャッターボタンから紐状のものが繋がっているのを見たりすると思いますが、そういうものを使ったりするんですね。

文化財保存修復関係での撮影ですと、PC上で確認しながら撮るので、シャッターすらもPC上で押すことになり、こういうことで手ブレを押さえていたりもします。勿論三脚を使用した上で、ですよ。

本日のまとめ的なもの

「写真を作品として撮る」場合ですと、シャッタースピードを利用して、面白い作品を撮影することも可能なのですが、あくまでも文化財保存修復関係の撮影の場合は「作品の真の姿」を撮る、「資料として最良のもの」を撮るということが大事ですので、シャッタースピードの違いによる表現の違いなどについては割愛します。

シャッタースピードの違いによって、光の量が変わると当然写真に写りこむ色合いが変わるので、文化財関係においては非常に重要なところですね。

こういうのも実際にカメラを触って見ないことには「納得感」が得られないので、是非カメラに触れる機会がありましたら、色々試してみてほしいなと思います。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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