文化財保存修復におけるカメラの話:F値②:被写界深度

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事にてどうしてカメラのお話をするのかといった概要のお話をしました。また、2つ目の記事から少しずつカメラの話をしております。くわえて3つ目の記事からは文化財関係の写真撮影をする上で知っておくべき専門用語の一つであるISO値に関してお話、2つ前の記事では撮影において重要な露出(露光)のお話、そして直近の記事にてF値についてお話し始めました。

よい写真を撮影するには、「ものを見る」原理と同じに「光」が重要となり、また適正な光をもってして撮影するためには適正露出(露光)が大事になります。この適正露出に関わるのがすでに説明しているISO値絞り、そしてシャッター速度の関係なんですね。

ただし、文化財保存修復の中でも絵画関係においてはISO値は100で固定していることが多いので(ISO値は数値が大きくなるにつれて、逆に画像にノイズが入る傾向があるためです。最大限作品の適正情報を得るためには、ノイズのない写真が重要です)、変動するのは絞りやシャッター速度であることが多いですね。

と、ここまで書いておりますが、ブログ主は別段カメラの専門家ではありません。もしかしたらカメラの専門家の方から見たら「何いうてんねん」という内容があるかもしれません(汗)。もしそういうのがあるよ~とお気づきの方がいらっしゃったら、色々教えていただけるとありがたいです(ぺこり)。

というところで本日の本題である「F値」に関する続きをお話していきます。

F値と被写界深度の関係

過去の記事や上記のように、F値というのは適正露光に関係があるよ、という話は繰り返ししてきました。

これはカメラに限らず我々の目も同じで、過剰に光があると目つぶし状態になって十分目が見えない状態になったり、あるいは逆に十分な光がないときには視界が狭くなったり、細部が見えなくなったり、色彩が適正には見えなくなったりするのと同じです。

ですので適正露出に導くためにはISOとともにF値やシャッタースピード(SS)も同時に調整する必要性がありますし、この3つのバランスが取れてきちんとした写真というのが撮れるんですね。

しかしF値のありかたはこの光の量の調節だけではありません。実はこのF値を変えると、光の量だけでなく被写界深度(ピントのある範囲(被写体の前後の深さ))が変化します。

被写界深度というのはつまり「ピントが合っている範囲」を指します。人間の目から見て画面がボケた状態ではなく、モチーフがくっきりしている範囲が被写界深度となります。

具体的にいいますと、F値が小さいと写真に写るすべてのモチーフがはっきりしている状態にならず、主人公であるモチーフの前後のモチーフがボケた状態になったりします。

対してF値が大きくなるとピントの合っている範囲が広くなり、写真に写っているモチーフすべてをはっきりピントが合った状態で撮影することが可能にもなります。

すなわち、F値(絞り)の数値がちいさいほど背景がぼやけやすくなり、逆に数値が大きくなるほど背景があまりぼけなくなるという特徴があります。

F値と被写界深度について簡単にまとめると

以下はあくまでも簡単なまとめです。

・F値が小さいと=(同一のSS値の場合)取り込める光の量が多くなる=写真が明るくなる=被写界深度が浅い=ピントの合う前後の幅が狭くなる=被写体(主役のモチーフ)の前後がボケて写りやすい

・F値が大きい=(同一のSS値の場合)取り込める光の量が少なくなる=写真が暗くなる=被写界深度は深くなる=ピントの合う前後の幅が広くなる=F値を絞った状態よりは被写体(主役となるモチーフ)の前後のピントが合いやすい

※なお、結構ややこしいのですが「F値が小さい」というのは「蛇口が開いている状態」で、「F値が大きい」というの「蛇口がすぼまっている状態」です。

「小さい」「大きい」というと蛇口の「開きっぷり」のほうを想像してしまうのですが、そうではありません。

基本として「蛇口は開いた状態(光がじゃんじゃん駄々洩れている状態)がデフォルト」として、それに対して「蛇口をどれだけ絞るか」の「行為の大きさ」を「小さい」「大きい」としていると考えると理解しやすいのかな、と思います。「じゃんじゃん水が出ている蛇口をちょっとだけ絞ったよ=光がいいぱい入ってくる」「じゃんじゃん水が出てくる蛇口をいっぱい絞ったよ=光が殆ど出てこない」。どうでしょう。理屈としてはご理解いただけるでしょうか?

本日のまとめ的なもの

F値が光の量であったり、被写界深度に関わるということは比較的覚えやすい事項だったりするのですが、「大きい」「小さい」の関係性や、F値の大きさと被写界深度がどうかかわるかという点についてはややこしいので、結構ごっちゃになっちゃいますね(^^;)。

ですが、これも実際撮影をしてみて体で覚えるとわかりやすいので、実際撮影をすることがある、あるいはお家にカメラがある、アナログ機能がある、という場合は是非試してみてほしく思います。

別段文化財保存関係の写真に関わらず、記念撮影や風景の写真、何かを撮影するにおいて持っていて困る情報ではありませんから(^^)。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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