文化財保存修復のための西洋絵画の歴史:北方ルネサンス

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事より、美術や絵画の発展の歴史について、ごくごく簡略的なお話ですが、書いております。また、美術史の順番どおりとしてまずギリシャ美術に関してや(ギリシャ美術続き①ギリシャ美術続き②)、ローマ美術に関してお話しました(ローマ美術①ローマ美術②)。直近の記事ではロマネスクとゴシックに関して記載しております。

本日は北方ルネサンスのごくごく概要について。「概要」とわざわざ記載しているのは、また別に北方ルネサンスについてもう少しお話できればと思っているためです。ルネサンスについては皆さん詳しいですが、北方ルネサンスの知名度みたいなもの、日本だと低いんですよね(汗。ごくごく個人的な疑問ではあるのですが、TVの美術系番組でもイタリア系ルネサンスとか印象派、アール・ヌーヴォーあるいは古代エジプトとかをしつこいくらい繰り返しやるわりに、不思議と北方ルネサンスとかやらないですからね…なんでなんでしょう?)。

なお、このシリーズの記事で常に同じに書いておりますが、当ブログでは美術史に関しごくごく簡略的なお話のみを書いていきます。あくまでもこういう記事を読むことで、当時の美術作品および西洋美術史などに興味を持ってただけたら嬉しいな、という記事であって直接研究やお勉強に役立つものではないとお考えください。

ですので詳細な美術史などを学びたいなどの場合は、いろんな文献などがでておりますので、是非そちらをご参照くださいませ(ぺこり)。

北方ルネサンス

15世紀から16世紀のネーデルラント(オランダ)、フランドル(北方ベルギー)、フランス、ドイツ語圏(ドイツ、スイスなど)の美術を一般に「アルプスより北」という意味で「北方ルネサンス」と呼びます。

14世紀から15世紀においては、これらの地域は毛織物で繁栄した自治都市が多く、人間的な文化が芽生えました。

商業活動が盛んとなり、都市の発達につれて、商人と彼らのギルド(同業組合組織)が力を有しながら、貴族化した支配階級と併存する形で市民階級が台頭します。

よって王侯貴族だけでなく、他に新たに芸術文化のパトロンとなった上層市民の現実感覚によって北方ルネサンスにおける写実芸術が促がされました。

15世紀における初期ネーデルラント美術、あるいはフランドル美術においては、それまでの国際ゴシックの様式に対してイタリア同様、新しい写実の絵画が生まれました。

しかし古代ギリシャ・ローマ美術をお手本として持っていたイタリアとは異なり、そうした先人をもたない北方においては、中世の伝統を保持しつつ、ゴシック彫刻やイタリア絵画など、さまざまな美術の影響を受け、身の周りの世界を新鮮な目で観察し表現しました。

このネーデルラント、フランドルにおける独自性は、イタリアのフレスコ画やテンペラ画とは異なって、油彩による画法を完成させ、その礎を築いたところにあるといえるでしょう。

本日のまとめ的なもの

西洋絵画でぱっと思い浮かぶものは?と日本人に聞くと、大体「ルネサンス」か「印象派」の作品(あるいは作者)が出てくる気がします(苦笑)。

とはいえ、実は油絵技法の完成などは「北方ルネサンス」の頃合いのことですし、また、ブログ主は個人的にフランドル絵画(北方ルネサンス系絵画)が好きなのでとりわけでありますが、北方ルネサンスの作品の完成度というのは美的にもそうですけど、保存的な意味合いでも本当に素晴らしくて。

ただ、この素晴らしい作品というのはギルドありきで、画家のみの力ではないということや、時代背景、当時の素材など、いろんなことが関わり合ってのことだと思います。

こういうクラシカルな作品というのは、正直なかなか日本でお目見えすることはなくて。だからこそおそらく日本などで番組編成されることがないのだと思うのですが、だからこそですけど、初めて現地でこれらの作品を見るといろんな方が感動されます。

実際たまたまブログ主が留学中、所用で日本に数日戻るために飛行機に乗っていたら、隣の席に乗り合わせた老夫婦が非常に興奮気味に「宗教画ってわからないと思っていたけど、本物をみると違うね!」などと話しかけてきまして。実はこういう感動が大きいのも、後世の時代の作品ではなくクラシカルな作品のほうだと感じています。

なかなかベルギーやら北アルプス地方にお出かけくださいと気軽には言えませんが、実際写真じゃなく本物に出会うとフランドル絵画は感動が大きいので、見てみてほしいですね(^^;)。

というわけで本日は本文自体は短くて申し訳ないですがここまで。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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