文化財保存修復におけるカメラの話:ホワイトバランス①

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事にてどうしてカメラのお話をするのかといった概要のお話をしました。また、2つ目の記事から少しずつカメラの話をしております。くわえて3つ目の記事からは文化財関係の写真撮影をする上で知っておくべき専門用語の一つであるISO値に関してお話、4つ目の記事では撮影において重要な露出(露光)のお話、そして4つ前の記事3つ前の記事、そして2つ前の記事にてF値のお話をしております。また直近の記事ではSSについてお話をしています。

と、ここまで書いておりますが、ブログ主は別段カメラの専門家ではありません。もしかしたらカメラの専門家の方から見たら「何いうてんねん」という内容があるかもしれません(汗)。もしそういうのがあるよ~とお気づきの方がいらっしゃったら、色々教えていただけるとありがたいです(ぺこり)。

というところで本日の本題である「ホワイトバランス」にしてお話していきます。

目のすごさとカメラとの違い:なぜホワイトバランスが必要なのか

そもそもホワイトバランスとはなんぞや?というところから始まるのですが、ホワイトバランスとは、「撮影環境での光の色の影響を補正して、白を白として写すための機能」を指します。

これは「撮影」においてはアナログカメラにはない作業で、デジタルカメラにのみ発生する作業じゃないかしら。

アナログなフィルムカメラの場合、白黒フィルムの現像および紙焼きは写真のプロではない我々文化財保存修復関係者でも自分でやれる作業ですが、カラーフィルムの現像および紙焼きは素人には無理!ということで、ブログ主自身、自分でやったことないですし、現像現場を見たこともありませんのでプロの現場ではどうしているのかは不明です。しかし、フィルムカメラでの撮影の場合もカラーチャートと一緒に撮影を実施し、カラーチャートの色彩に合わせて紙焼きをしていると考えるため、紙焼きなどで色彩をコントロールしてくれているのかなと考えていたります。

さて、上記にてブログ主が何を言っているのか?と疑問になると思うのですが、写真における「白っぽさ」はホワイトバランスで大きく変わるため、ホワイトバランスの話は重要だったりします。なぜなら白いものを白く写すのが綺麗な写真に写すコツらしいからです。

「白いものを白く写す」だなんて、一見当たり前のことのように思えます。なぜなら人間の目の機能は非常に優秀であるがために、野外でも屋外でも、白いものは白いと認識するためです。しかしカメラはいかないのです。なぜでしょうか。

過去記事にて何度もお話していることですが、人間が物を見るときに必要とされるものがあります。「光」と「物」と「目(そして脳)」です。「目(そして脳)」と書いているのが結構重要でして。目だけあっても、目は光の受容器官であってもそれをデータ処理する機関ではないので、光というデータを処理する脳という器官があってこそ、光を「視覚」に利用することができるんですね。人間の目と脳の場合、どのような光の下であろうとも、脳のデータ処理のおかげで「白いものは白い」と認識するのですが、カメラの場合は人間が「ホワイトバランス」という処置をしてあげないと、光源によっては「白を白」として認識しなかったりするようです。カメラは基本の色である「白」を「白」と認識できると、それと同時に他の色彩に対しても調整できるようですので、この「ホワイトバランス」という処理をすることは、文化財の持つ固有の色彩を適正に写真に記録するためにも非常に重要になります。

「光源によってはカメラが『白』を『白』として認識しない」という起こるのは光というのは常に一定ではないためです。

例えば想像してほしいのですが、太陽光が降り注ぐ日中の野外、曇りの日、蛍光灯の室内、ぬくもりのある白熱電球でのレストラン、暗闇の中のろうそくの光に照らされた室内、暗闇の中の花火の下など「光源」は様々。こういった様々な光の下に、真っ白な「紙」を被写体として撮影した場合、「白い紙」は果たして白として写るのでしょうか。実のところ、カメラで撮影する場合は、カメラに「周りの光の色はこんな光だよ」と設定してあげないと、白色がわからないのです。   

人間の目はどんな状況でもある程度白い色を白を認識できますが、これは人間の脳の中で、光源の色を判断して、「あ、太陽の光の下だ」「あ、ろうそくの光が光源だ」と、補正の下で白いものを白と認識しているためです。それに対してカメラには脳みそがついていないので、予め撮影時の光源の色を設定してあげなければなりません。こういう設定なしに撮影をすると、本来白いモチーフが黄色っぽく写ったり、青っぽくなったりしてしまいます。つまり「白色」が「白色」として撮影することが不可能なんですね。こういった現象を防ぎ、補正するためにホワイトバランスを調整します。つまり、ホワイトバランスというのは、光源の光がどのような色なのかを調整し、白を白として正しく写せるよう補正する機能をさします。

また逆もしかりで、同一の光源、たとえば蛍光灯の光の下で撮影する中で、カメラのホワイトバランスを色々変えてみると、同一の「白い紙」を撮影していようとも、その「白い紙」が様々なニュアンスの色彩で撮影されてしまいます。カメラは人間の目のように自動的に光源に関して対応してくれないので、こうやって撮影者の手によって「光」に関する「設定」をしてあげないと「撮影者の望む白さ」で撮影することができなくなります。

勿論ホワイトバランスの設定によって、白色だけでなく、写真全体の色合いが変わってしまうことから不自然な写真に仕上がってしまう場合もありますので、正しいホワイトバランスを設定するのは特に視覚芸術である絵画作品の視覚的資料の保存において重要です。   

本日のまとめ的なもの

デジタルカメラの良さというのは、撮影している段階で仕上がりを確認でき、何十枚とかであろうともお金をかけずに撮影できるところです。

反面、これは実際ブログ主が経験したことですが、カメラの調子が悪くなると、いかにホワイトバランスを整えようとも写真の色味の仕上がりが変になることがありました。

フィルムタイプのカメラもそうですが、デジタルカメラも精密機械ですし、「物」である限りは調子が悪くなったり故障したりしますので、「色味」が合わなくなることも別段奇妙なことではありません。

しかし「色味を合わせて撮影できる」ことが当たり前と思っていると、いざカメラの調子が悪くなり、「色味が合わない~(泣)」ということが起きると、いかに適正に色が見えることや適正に撮影できることがありがたいかと実感します(苦笑)。

こういう「うわ~ん!」ということは実際経験したくないことではありますが、経験すると理解が深まったり、経験値として増える部分もありますので、わざわざ「うわーん!」を経験する必要性はありませんが、「こうやると色味が合わないのか」みたいに色々ホワイトバランスを変えて撮影してみる経験などをしてみると面白いのかなと思ったりします。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さりありがとうございます。

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