毎度毎度同じシリーズ内で同じ文言を繰り返してはおりますが、前置きとしまして、この用語シリーズはブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となります。西洋絵画を構成する素材の一つである「顔料」を理解する足がかりの一つとして記事にしております。
このシリーズの最初のものや、過去の記事にて他の顔料の説明をしている記事もありますので、よろしければご覧ください。
また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分があります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。
直近の記事から黄色顔料の話をしておりますが、当記事はその直近の記事の後半部分となります。先に前半を読まれるとよりよいかもしれません(^^;)。
プリントの本文:黄色顔料1:鉛と錫の黄色の複酸化物2/2
- 2つのタイプが存在する:ⅠとⅡ
- タイプⅠは最もしばしば用いられる。600~800℃で加熱した酸化鉛や酸化錫 (Pb2SnO4): 650℃と800℃の間で単一酸化物の鉛もしくはミニウム(一酸化鉛)もしくは二酸化鉛を3部と、それに対して1部の二酸化錫の混合を加熱しながら準備する。720~800℃程度で、レモンイエローの色彩が現れる。ミニウムあるいは二酸化鉛と共に最も美しいものが手に入る。
- タイプⅡは14世紀のはじめから15世紀半ばまでの間に用いられた。これはPbSnO3で、無水珪酸と常に結合する。これはガラスに色をつけたり不透明にするものとして用いられた(1300年より以前から知られる)
- この顔料は18世紀に酸化鉛と酸化アンチモンであるネープルスイエローに取って代わられた
- 油あるいは油と樹脂の混合、もしくは卵、カゼイン、植物性ゴムなどと混合してもよい耐久性をもつ(黒色の鉛の硫化物を生成する可能性がある):油分における乾燥効果(他の鉛の顔料のように:油の脂肪酸との相互作用のおかげで鉛の塩が乾燥時作られる)
- 絵画の中ではこの顔料は鉛白、ヴァーミリオン、オーカー、黄色のレーキ、ヴェルデグリ、アズライトやインディゴとともに発見される。とりわけヴェルデグリ、アズライトと鉛白とともに初期フランドル絵画の背景や葉のついた木の下地、すなわち樹脂酸銅の下層として用いられる。
プリントの本文
- Il existe deux types: Ⅰet Ⅱ:
- Le plus souvent utilisé est le typeⅠ, oxyde de plomb et d’étain chauffé à 600 – 800℃ – Pb2SnO4 . Il est préparé en chauffant entre 650℃ et 800℃ un mélange de 3 parts de monoxyde de plomb, ou de minium (oxyde de plomb) ou de dilxyde de plomb avec 1 part de dioxyde d’étain. Vers 720℃ – 800℃ apparaît la couleur jaune citron. Le plus beau s’obtient avec du minium ou du dioxyde de plomb.
- Le type Ⅱ, utilisé du début du ⅩⅣème siècle jusqu’au milieu du ⅩⅤème, c’est le PbSnO3, toujours associé à de la silice. Il a été employé comme opacifiant et colorant des verres (connu avant 1300).
- Il est remplacé au ⅩⅢéme siècle par le jaune de Naples, un oxyde de plomb et d’antimoine.
- Bonne résistance avec l’huile, l’huile-résine, l’oeuf, la caséine, les gommes végétales (possibilité de formation de sulfure de plomb noir); effet siccativant sur l’huile (comme les autres pigments au plomb: des sels de plomb se forment au séchage prâce à une interaction avec les acides gras de l’huile).
- trouvé en peinture combiné avec du blanc de plomb, vermillion, ocre, laques jaunes, vert-de-gris, azurite et indigo, surtout avec le vert-de-gris, l’azurite et le blanc de plomb en sous-couche de feuillages et paysages des Primitif Flamands sous un résinate de cuivre.
本日のまとめ
こういう絵具なりなんなりの説明を大学で授業にて教えていた時に、ブログ主が頭の中でよく思っていたことが、「世の中が便利になることは本当にありがたいことだけど、【それが何からできているか、どうやってできているか】ということを曖昧にしてしまう部分もあるのかも」ということでした。
例えばスーパーにいけばカレーの素が売られていて、一応それを手順通りに使えばだれにでもおいしいカレーを作ることができるのですが、カレーの素を使わなくてもカレーを作ることはできるはずなんですよね(^^;)。いや、ブログ主はそういうところに凝っていないので、自分ではできないのですが…。
ただね、「市販の何か」というのはそこに何が使われているのかというのは不明だったりするんですね。勿論食べ物の場合や化粧品などの場合、内容成分の記載はありますが、それらがどれだけの割合で使用されているのかや、ある程度低い割合で使用されている添加物なんかは記載しなくてもいいんじゃなかったかしら?そうすると、実は市販品っていうのの構成物というのは明瞭なようで、実のところ不明瞭であることって多いんです。
それは絵具も同じで。時代毎、地域ごと、画家の趣味あるいはアトリエ全体として使用されていた素材を知るということは、本当に重要な反面、実際のところ難しいことで(例えば近現代で言えば、市販の絵具なんかは製造販売会社独自のレシピがあるわけですので、やはり明瞭には何がどれだけ使用されているなどは不明なわけです)。
だからこそではあるのですが、具体的に絵具がどういう素材からなるのか、どのように作られているのか、どういう利点やデメリットがあるのか、近現代と古典でどのような違いがあるのかなどを理解できると、表現という場での使用やその保存、あるいは処置で使用するにおいても非常に役に立つんですということが伝わればいいなぁと思いつつ。
本日は以上にて。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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