毎度毎度同じシリーズ内で同じ文言を繰り返してはおりますが、前置きとしまして、この用語シリーズはブログ主が海外の大学で留学していた際に、授業でいただいたプリントの翻訳となります。西洋絵画を構成する素材の一つである絵具を理解する足がかりの一つとして記事にしております。ただ、もし文化財保存修復を学びたいなーという方が読まれている場合は、こういう記事のみをうのみにするのではなくて、いろんな文献を比較参照してくださいね(^^)。
また各記事にくり返し書いておりますが、このシリーズは翻訳であることから、文章として固い感じがあるだろう部分、あるいはわかりにくいがあります点、改めまして先にご了承くださいませ(ぺこ)。顔料や絵具に関しましては、現在やっている【用語】シリーズに関わらず、すでに過去の記事で何度か書いている部分もありますので、そちらもご覧いただけるとわかりよいのかな…と思いつつおります。
本日はモノテルペンあるいはセスキテルペンの中でも「テレピン油」についてです。油絵具で描いたことがある方だと「ああ」と思っていただける素材です。ただし、非常に重要なこととしては、「保存修復」では絶対に使用しない素材でもあります。
「描く上では使う」でも「保存修復では絶対使わない」というのは非常に面白いところですよね。残念ながら本日のプリントの中身ではその「なぜ」という点までは掘り下げていませんが、「人が言ったから使えない」とか「先生が、学校がそういったから使えない」ではなく、「なぜ使えないのか」ということを学ぶことってとても大事かと思います。
というわけで本日の記事をどうぞ。
プリントの本文:結合剤と希釈材18:モノテルペンおよびセスキテルペン1:テレピン油
モノテルペンおよびセスキテルペン
テレピン油
- 無色透明、強い芳香を発散する、揮発性の液体
- 松(海辺の松)の分泌物の蒸気蒸留によって得られる。蒸留されたテレピンは芳香性炭化水素のテルペンの混合物である。
- テレピン油の沸点は150~180℃に位置する
- テレピン油は大概のテルペン樹脂や重合反応をする油、乾燥剤として用いられる金属石鹸に対し可溶化させる
- テレピン油を使用する際は蒸留したてのものを使用するか、酸素がなく光の当たらない場所に保管したものを用いることが重要である:樹脂化の危険性(テレピン油の変質、重合現象):大変純粋なテレピン油を用い、テレピン油を二度蒸留する
- テレピン油の絵画における出現は、中世の終わりにさかのぼる。蒸留されたテレピン油はワニスの成分として16世紀に出回り始める。
プリント本文
MONO- et SESQUITERPENES
Essence de térébenthine
- liquide transparent, incolore et fortement odorant, volatil.
- obtenues par entraînement à la vapeur des sécrétions de Pinus (Pin maritime). La térébenthine distillée est un mélange d’hydrocarbures aromatiques terpéniques.
- sa températre d’ébullition sesitue entre 150 et 180℃
- elle solubilise la plupart des résines terpéniques, les huiles même polymérisées et les savons métalliques utilisés comme siccatifs.
- Il est important d’utiliser l’essence de térébenthine quand elle est fraîchement distillée ou de la conserver en absence d’oxygène et à l’abri de la lumière: risque de résnigication (elle graisse, phénomène de polymérisation): utiliser une térébenthine très pure, la térébenthine distillée 2 fois.
- Son apparition en peinture date de la fin du Moyen Age. La térébenthine distillée devient courante au 16ème siècle, comme ingrédient des vernis.
本日のまとめ
ブログ主が大学で教えていた時に実際学生に常に言っていたことなのですが、「作品A」に対する「修復素材」や「修復方法」を選択する際の理由として「だって先生が(学校で)そう言った(そう習った)から」は理由にはならない、ということです。
「いつも学校で使っていた方法や素材」「先生から習った素材や方法」というのは、「ある作品A」には適合しても、「別の作品B」には適合しない可能性があるからです。
ですので「作品B」のアイデンティティを理解した上で、それに適する「素材や方法」を選択するというのが「理由」なわけです。
そういう「理解」への重要性というのは、本当にヘレン・ケラーの「ウォーター」位に、長い期間の学びを経て、(ある意味)突然やってくるものだと思っていまして。だからこそ、あきらめずに学ぶ姿勢というのが重要だったり、プロとしてお金を頂いてお仕事をする身となった今でも、やはり学び続けることというのは非常に大事だと思っています。
自分が「ウォーター」くらいに目から鱗ー!って思っていた先に、まだ鱗が残っていたりするかもしれませんし、いろんな気づきとか、学びってありますから。同じ本を読んでいても。
というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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