紙ってどんな素材⑯?:羊皮紙に使われる動物って?

修復を学ぶ

ここしばらく紙の記事を書いていますが、4つ前の記事からその中でも羊皮紙の話を書いております。

なお、3つ前の記事や2つ前の記事でも書きましたが、羊皮紙は一般的には「紙」ではない、ということを前提としてご理解ください。

また、多くの場合この羊皮紙が「絵画」に使われるという機会は決してゼロではないものの、実際「絵画」としての作品を見ることは殆どないこと。そして多くの場合は文字のための基底材(媒体)になってることから、2つ前の記事および直近の記事にて文字に関するお話をしております。

なお、当記事を含む紙シリーズの記事に関してですが、私自身留学中およびその後に個人的に興味があって調べた内容ではありますが、ブログの内容ですのであくまでもレポートや論文に利用するほどにうのみになさらないようお願いします(ま、通常ブログなどはレポートや論文の参考文献にはなり得ないので、その旨をご理解いただければ、当ブログ全体をそのような利用はしないとは思いますが…)。

また、当ブログなどでご興味を持っていただいて、自ら文献などを調べてみよう!という気持ちになっていただけるとすごく嬉しく思います。

ここまで羊皮紙あるいはその周辺に関して書いておりましたが、この記事ではどのような動物の皮が羊皮紙として使われていたのかというお話をします。

よくよくある誤解ですが、日本語では「羊皮紙」と書かれることから、獣皮を紙のように扱ったものの「原料は羊に限定される」と思っている方が意外に多いようです。

しかし、実際は様々な動物の皮が用いられています。とはいえ、皮を書こうして紙のようなものを作る、勿論その製造過程において廃棄分が出る、ということを考えますとある程度大き目の動物の皮が使われていることが多いです(効率がよいですから)。

また過去記事でも書いておりますが、「皮を採ることのみを目的として動物を屠っているわけではありません。

もともと家畜として食料をはじめ、色々な用途に用いるために動物を殺し、その用途の一つが羊皮紙なわけです。ですので、羊皮紙に使用される皮というのは狩猟で得たものよりは家畜から供給されます。

ただ、ブログ主は羊皮紙の専門家でもなければ、凡ゆる国凡ゆる時代の羊皮紙に精通しているわけでもありませんので、もしかしたら家畜ではない生き物、狩猟によって得られる獣の皮(狐やウサギといった比較的小さめの生き物ですね)から羊皮紙を採った実例もあるのかもしれません。

ただ、実際高級ブランドの鞄屋さんに行かれるとわかるのですが、普通鞄屋さんの皮は家畜である牛、馬、羊などの皮を使っています。家畜です。でも生き物ですので、大事に育てても、生きているうちに傷がつくこともあります。真綿にくるんで育てているわけではありませんから。あまりに大きすぎる傷ですと、鞄などに加工することもないのかもしれませんが、それでもある程度の大きさ程度ですと製品(鞄あるいはより小さな小物など)に加工することもあります。

正直ブログ主は高級ブランド品は使用していませんので、某ブランドLや某ブランドHの鞄で傷革を使っているかどうかは測りかねます(そもそもに店内に入るのが緊張するので入ったことすらない。笑)。でも、それよりランクが下がるより親しみのあるブランドの鞄屋さんの場合(ここではあえてイニシャルも言いませんが実在する、有名ブランドです)ですと、意外と傷革を鞄に使っています。すなわち「野生」ではなく「家畜」でもそれだけ傷が作ってことです。

その上で、野生の、しかも雄の皮はきっと家畜とは比較にならないくらいに傷がありそうだなぁと想像してしまいます(鞄の元となる雄牛も、丈夫である反面傷が多い素材です)。また、野生動物の場合は、結局のところ「狩る」という行動で獲得されるものです。その「狩る」という行動によって、それまでなかった箇所に大きな傷跡を負う危険性も多大にあります(ブログ主は狩りをしたことはありませんが、結局狩猟というのは狩られる側だけでなく狩る側にとっても命がけだと思うので、「頭だけを撃ち抜け」なんて、よほどじゃないと難しいのじゃないかと推察します)。

牛や羊のような動物より小型の野生動物を羊皮紙にはしないかもなぁ(やったとしても効率悪そうだなぁ)と思うのは上記ような理由からです。大きな家畜を安全に育てて、必要に応じて屠るほうが効率がいい。

ですので多くの場合羊皮紙に使用されている動物というのは、羊、山羊、牛あたりが主流のようです。なお、大きめな動物でかつ、家畜の代表として豚も挙げることができますが、実は豚は羊皮紙の代名詞ともいえる写本においては殆ど使用されることはなかったようです。

というのは、紙的な基底材としては豚の皮を元としたものは毛穴が目立つという美観的問題や、あるいは宗教的な理由から豚は家畜ではあるものの、羊皮紙としての使用は殆どなかった模様(羊皮紙はアルファベットを使う国だけで使われているわけではありませんから)。

実際動物毎の羊皮紙の違いなんかは実物を観察することをお勧めします。

ブログ主は羊皮紙工房 – 羊皮紙工房 (youhishi.com)にて何度か羊皮紙を購入しています(外部サイトですので、その旨ご理解ください。日本で羊皮紙といえば、この方だと思います)。ブログ主は大学で教員をしていた際に知見を得まして、羊皮紙作成の講習も受講しました。ご興味がある方は是非サイトをご覧ください(^^)。

また、近年日本の外に出なくともオークションなどで簡単に羊皮紙に描かれた写本の一葉などを購入できるようになりました。勿論費用としましては一葉につき万単位かかりますが、実際に羊皮紙を基底材とした写本を手に取れるよい機会かと思います。可能であれば実店で本物の作品を手にとって購入するのがベストではありますが。

羊皮紙や写本の本場であるヨーロッパにいても、なかなか羊皮紙基底材の写本には触れませんでしたからね…。便利な世の中になったものよ…と感心します。

というわけですでに長く書きましたので、本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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