文化財保存修復におけるカメラの話:画角

修復を学ぶ

このシリーズ最初の記事にてどうしてカメラのお話をするのかといった概要のお話をし、また、2つ目の記事から少しずつカメラの話をしております。くわえて3つ目の記事からは文化財関係の写真撮影をする上で知っておくべき専門用語の一つであるISO値に関してのお話、4つ目の記事では撮影において重要な露出(露光)のお話、そしてその後の記事にて3回F値のお話をしております(F値①F値②F値3)。また4つ前の記事ではSSについてお話し、直近の記事までの3回、ホワイトバランスについてお話しておりました(ホワイトバランス①ホワイトバランス②ホワイトバランス③)。

と、ここまで書いておりますが、ブログ主は別段カメラの専門家ではありません。もしかしたらカメラの専門家の方から見たら「何いうてんねん」という内容があるかもしれません(汗)。もしそういうのがあるよ~とお気づきの方がいらっしゃったら、色々教えていただけるとありがたいです(ぺこり)。

というところで本日の本題、画角についてお話します。

画角とは

画角とは、撮影できる範囲を角度で示したものです。

レンズが取り外しできるタイプのカメラの場合、使用するレンズによって「標準レンズ」「広角レンズ」「望遠レンズ」などに分類されますが、このレンズの種類によって画角が変わります。

また、画角は、イメージセンサーの大きさによって左右されるようです。ちなみにイメージセンサーに関しては過去記事をご参照くださいませ(ぺこり)。

このセンサーサイズが、大きくなるほど写る範囲が広くなり、小さくなるほど写る範囲が狭くなるという特性がありのだそう。過去記事でも書きましたが、イメージセンサー部分というのは、いわばフィルムタイプカメラにとってのフィルム部分のようなものですので、フィルムが大きければ大きいほど情報量が大きくなるというのは当然のことかと思います。

長方形を長方形として撮影できることが求められる

さて、文化財保存修復における撮影というのは、いわば作品に関する特徴などを正確に記録するための撮影ですので(いわゆる「写真自体を作品として撮影するのではない」ということ)、作品の特徴を正しく写真の中に納める必要性があります。

過去記事のISO値、F値にSS、ホワイトバランスなどのところで、「細部が」や「色彩が」などというお話をしましたが、そもそもに、作品の形状自体を正しく写真に収める必要性があります。

日本における油絵の形状というと大多数が長方形です。この長方形を長方形として撮影する必要性があります。

こういうと「何を言っているんだ?当たり前じゃないか?」と思われると思います。

例えばもしご自宅に画集など、なんらかの絵画作品の写真が載っているものがありましたら、是非三角定規など、「90度」が明確に計測できるものをお持ちになって確認してほしく思います。

おそらく、作品自体の形状としてゆがみのあるものを省いて(あるいはもともと長方形や正方形ではない作品を除いて)、四隅がきちんと90度を持つ、きれいな長方形で撮影されているはずです。

「当たり前」と言われそうですね(苦笑)。でも、これを実際に中型カメラ以上のもので撮影してみるとお分かりになると思うのですが、非常に難しいのです。慣れると数分でカメラのセッティングをすることができるのですが、慣れないと、たかが1ショットのために数時間かけて「長方形」になるようにファインダーに作品を納められるよう必死になる必要性があります。

こういう「長方形を長方形として」というようなこだわりは、もしかしたら文化財保存修復関係でも西洋絵画保存修復に限定されることかもしれません(立体作品などには「定型」というものがありませんので)。しかしこの「長方形を長方形として(決して平行四辺形や台形にはしない)」は最低限のやるべきことですので、これができないとどんなにISO値、F値、SS、ホワイトバランスをどーのこーのしても、正直意味がなかったりするんですね。

本当にこの「長方形を長方形に」ファインダーに納めるというのは、慣れでしかありません。ブログ主自身、1つの作品の数ショットの写真のために、撮影を習いたてのときは1日仕事で撮影しました(午前から撮影して、終電で帰ったことがありました。それほどカメラの位置決め、下手くそでしたし、今も慣れはしましたが、決して上手とは言い難いです)。

作品撮影の授業をすると、大体半分くらいの学生がこの作品をきれいな画角に納めるということに対して恐れがでてしまい、「撮影好きじゃない」というネガティブに捉えてしまう学生さんもいます。実際ブログ主も学生時代、撮影不得意でしたので初心者の気持ち、よくよくわかります…。

反面、こういう写真できちんと記録が撮れる、というのも我々の仕事においては非常に重要なことですので、根気よく、触った分だけ上手になれると信じてもらって、できるだけカメラ、触ってもらえたら、それだけきっと撮影、上手になると思っています(^^)。

本日のまとめ的なもの

この記事までの間、カメラのことも含めですが、240近くの記事を書いているのかな。

それらを読んでもらえたら、我々文化財保存修復の仕事が「壊れている→手を入れよう」というお仕事ではないこと、おそらくわかっていただけると思いますし、また、「私は絵を描くのがすきだから、こういう仕事がしたい!」という方においては「絵を描くことができるだけじゃなく、あれこれ思いがけないことを勉強し、理解し、できるようになる必要性がある」といことがきっとお分かりいただけると思います。

自分自身が学生時代「苦手だよぅ」「うまくいかないよぅ」と困ったものの一つがカメラでしたので(当時はフィルムタイプ中型カメラでしたが)、こういうことを書きながら、自分自身、苦手なことなども必死で頑張って勉強したんだなぁとちょっと感慨深く思いました(^^;)。

というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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