絵具って何からなるの?:おおよそ「顔料」+「●●」

修復を学ぶ

ここ直近の記事では「絵具」って何?という話を進めています。

その上で、絵具に求められる3つの必須条件として「有色であること」「物質であること」「(描くべき対象に)付着すること」が挙げられるとともに、それとは別に「扱いやすいこと」や「一定期間変化しないこと」が求められます。

こういった絵具の「有色である」要素を満たすものとして「顔料」が構成要素として含まれていることを説明しましたが、「顔料」だけでは「絵具」として成立しないことも書きました。

ですので、ここからは「絵具」には「顔料」以外に何が含まれているのかを書いていきたく思います。

絵具はおおよそ「顔料+●●」でできている

先にご説明しましたとおり、絵具には「顔料」が含まれますが、顔料は、上の3つの必須条件上、「付着する」はクリアできない素材なんですね。ですので、顔料のみですと砂絵みたいなもので、風などでさらさらと消えてしまう。

よって、少なくとも「(描くべき対象に)付着するもの」が含まれないと「絵具」とは言い難い、ということになります。

このことから、絵具には「顔料」とは別に「(描く対象に)付着する」ための物質が別途入っています。

「付着する」とはどういうこと?:「付着」のための素材とは

「付着する」というと、一般的にどういうものを思い浮かべるでしょうか。

「付着」、というとわかりにくいかと思いますので辞典で「付着」という言葉を調べてみますと二つの意味合いが紹介されています。

①物が他の物にくっつくこと:例「服に塗料が付着する」

②異なる二つの物質が接触したときに、互いの分子間力によってくっつくこと。凝着。

②は難しい話ですので、①のみについて考えるのですが、物が他のものとくっつくということを考える場合、磁石や静電気のようなもの以外で考えると、多くの場合「なにかべたべたしていたり、液状だったりするもの」を想像すると思います。

例えばなにか「接着剤」みたいなもののような。

一般的に「接着剤」というのは、それを塗り広げるときには主に液体などの状態で、でも時間の経過など、ある一定条件をクリアすると固化し、モノとモノとをくっつけ、べたべたしない状態になります。

例えば封筒に切手を貼るときなど、切手を貼る際はぺたぺたしていたり、貼った切手を剥がしたり移動させたりが可能ですが、一度接着成分が乾燥すると、貼りつけられた切手は容易には取り外せませんし、移動させることも難しいでしょう。一般的な生活をする上で、よくよく経験する「接着行為」はこんな感じです。

さて、では絵具においてはどうでしょうか。

「色彩を担当」する「顔料」の粒子同士をまとめたり、それらペースト状などの絵具を「絵を支えるもの」にくっつける必要性があります。

ですので、それら粉末状の顔料を凝集する力をもつもの(たとえば歯磨き粉のようにペースト状にまとまったり、チョークやコンテのように棒状にまとめたり、あるいは絵具を描く対象に塗り広げ、それらが乾燥・固化した際に、絵具が「絵具面」として保つことができるような、粉末同士がまとまることができる力を凝集力とします)必要があります。

また、接着剤的なものに顔料を混ぜ合わせたものを使って描画する際などに、その混合物が広く伸び広がる必要があります。

さらに、いつまでも塗り広げた絵具がべたべたしていると困るので、乾燥・固化すること、そしてその際に「描いた対象」に対して絵具がしっかりくっつくことが求められます。

「付着する物体」が変わると、絵具としての性質も変わる

実のところ顔料は、国などが異なっても不思議と同じ原料のものを使っていたりするので、色を担当する素材は大きく異なることはありません(国よりもむしろ時代毎の発展・発見などによって、いろいろ新しいものがでてきたりします)。ですので、「絵具の名称」(水彩だとか、油彩だとか)は、別段顔料に左右されるものではありません(勿論市販の絵具の場合、チューブの名前なんかは「色彩」と関わりがありますので、顔料と関係します)。

これに対し、同一の顔料い対し接着剤のようにくっつく成分のみを変化すると絵具の名称や使用用途、絵具としての性質などが変わります。

例えば一般的に油絵具と呼ばれているものは、顔料に油(主にリンシードオイルやポピーーオイル)が含まれた絵具を指します。

ちなみにリンシードオイルやポピーオイルは乾性油と呼ばれる油です。このような乾性油ではない食用油のオリーブオイルやサラダ油に顔料を混合して描いても、固化することは難しいので気をつけて。

あるいは、水彩と呼ばれる絵具は、顔料にアラビアガムなどのような水に溶解する樹脂溶液が用いられています。

このアラビアガムの量や濃度を変えて、顔料を練るとパステルを作ることもできます。

また、顔料と蝋と混合させるとクレヨンになります。

ただ、この接着剤的な役割をする素材は、単純に「(描く対象に)付着する」ことだけの役割をしているわけではありません。

実のところ、「色彩」「視覚」に大きく関わりがあります。

先ほども書きましたとおり、絵具は顔料と接着剤的なものからなりますが、顔料は日本画だろうと西洋画だろうと、ほとんど素材として変わりません。古い時代であれば特に。

でも、同じ顔料を使っているはずなのに、水彩と油絵では、方や色が深かったり、明るい色調だったり、艶があったりなかったりしますよね。

本日の簡単なまとめとして

こういう同じ素材からなる顔料を使っていても、接着剤的なものの素材によって、色の深みや艶の在り方、あるいは色味が少し変わったり、場合によってはやや透明化するものなどなどあります。

いわば、「付着させること」だけでなく、油絵具なり、岩絵の具なりの「絵具らしさ」を表現するのがこの接着成分的なものの役割なんですね。

正直こういうお話は、いろいろ誤解や語弊のありそうな部分もありますので、詳細にやりたいところですが、本日は簡易的にここまで。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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