3つ前の記事にてどうしてカメラのお話をするのかといった概要のお話をしました。また、2つ前の記事から少しずつカメラの話をしております。くわえて直近の記事からは文化財関係の写真撮影をする上で知っておくべき専門用語の一つであるISO値に関してお話しました。その上で本日は撮影において重要な露出(露光)のお話をしようと思います。露出とだけ書きますと、何か犯罪的な、不穏な空気を感じるので、同じ意味合いの言葉である「露光」という言葉も書き添えています(^^;)。
とはいえブログ主は別段カメラの専門家ではありません。もしかしたらカメラの専門家の方から見たら「何いうてんねん」という内容があるかもしれません(汗)。もしそういうのがあるよ~とお気づきの方がいらっしゃったら、色々教えていただけるとありがたいです(ぺこり)。
というわけでここからが本題。
露光とは
ここからは露出(露光)についてお話します。
「露出」について簡単にいうと、イメージセンサー(撮像素子)やフィルム(このシリーズの最初の記事にイメージセンサーに関して記載しております)に光を当てることを露出(または露光)と言います。もっと簡単な言い方をすると、最終的な「写真の明るさ」ともいえるでしょうか。この露出を調整することで、明るい野外でも暗い写真や、夜の室内のような暗い場所でも明るい写真にすることができます。また過剰に光をとりこんだ状態で写真を撮ると、全体的に白っぽいといいますか、細部がふっとんだ写真になりますし、光の量が足りないと全体的に暗くてこれまた細部や色彩が適正に写らず、何が映っているのかわからない写真になります。
写真の出来栄えを左右する露出は、先にご説明しましたISO値と絞りやシャッター速度の関係などで決まります。
適切な条件で撮影すると、写真もちょうどいい具合に仕上がります。この露出がうまい具合になっているものを適正露出といいます。つまり「こういう風に写真を撮りたいんだ」という目的に対し、「過不足なく十分に適正な光がイメージセンサーあるいはフィルム上に当たっているよ」ということを指し示しています。
例えば「適正な光の量」というのが「?」という場合、「光の量」を蛇口からの水とコップの関係に例えるとよいと思います。「コップの縁すれすれいっぱい」を仮に「求める水の量(適正露出)」と過程します。かつ、「コップから水をあふれさせたら罰金」でも、「コップの縁すれすれいっぱいよりも少ない水の量では自分自身が喉の渇きとして不満…」とした場合、水道の蛇口から出す水の量が自分が求める量よりも多くても少なくてもちょっと不満だと思うのです。罰金も払いたくなければ、喉が渇いた状態も嫌ですからね。
写真をとる場合における光というのもそうで、イメージセンサーやフィルムに当たる光の量が多すぎても少なすぎても適正とはいえません。もしかしたらカメラマンが表現としてそういう光が多すぎるあるいは少なすぎるということを利用するのかもしれませんが、我々文化財保存修復関係者の撮影においてはそういう表現のことをしているわけではありません。作品に関する情報を他者に過たず伝えなければならないという立場にあります。
そうなると、実際の作品の色合いや艶、あるいは細部の情報を適正に撮影しなければなりません。そうすると、例えば高齢の女優さんのしわのあるお顔を、あたかもしわがないよう、見えないように撮影するためにイメージセンサーに過剰に光を当てる…というようなことをするようですが、こういうことは文化財保存修復においてはよくないです。また逆に、光を当てすぎずに暗い写真にして細部が見えない、色が適正ではないというのがよくないことは想像がつくと思います。文化財保存修復関係における撮影では、そういう意味合いで適量の光をイメージセンサーやフィルムに当てる必要性があります。
この適正な露光を求める際に必要になるのが、SSつまりシャッタースピード、Fつまり絞り、そしてISO感度が示されています。つまり、適正な露光にはこの3つの組み合わせです。
先ほどの光を水として例えた場合、カメラの絞りを水の蛇口の開きの度合い、シャッタースピードをその蛇口を開けていた時間、露出をコップに入った水の量とすると、コップに適量の水が入った状態を適正露出ということができます。(なお、「カメラの絞り」と「シャッタースピードに関しては後日別記事でさらにご説明する予定です)
適正な写真を撮影するには、この水がコップの中で、少なすぎず、あふれずといったちょうどいい感じになるようにすることです。そのために、絞り、シャッタースピード、露出をうまく調整する必要があります。
そしてこの露出の仕上がり具合については、シャッタースピードや絞り、ISO感度などを組み合わせが重要となります。蛇口とお水、コップの関係で考えると、蛇口を絞らずに目一杯ひらいている状態だと、コップに適正な量お水を入れるのにあまり時間がかからないでしょうし、逆に蛇口を絞ってお水を入れている場合は、コップに水がたまるのに時間がかかります。
このように、絞りという処置をすればすなわちシャッタースピードを長くする必要性があり、逆にめいっぱい開放するとシャッタースピードを短くすることができるわけです。 なおこれは、文化財を撮影する上では、基本的にはISO感度を100にということは先にお話しましたので、通常カメラの専門家であればISO感度から色々気を使うべきところではあるのですがこういう部分は無視してのお話ではあります。そういう意味では「撮影して作品を作り出す」よりはある程度やるべきことは限られているともいえるかもしれませんね。
本日のまとめ的なもの
かつて大学の授業でも、実際に学生にカメラを触ってもらう前にこのように説明をしていました。
でも実感として理解するにはやはりカメラ自体を触らないと、なかなか難しかったりするんですね。
また、自分自身の経験や受け持った学生の様子から考えるに、カメラ、特に中型カメラなどの高機能カメラは実際取り扱いが大変で、「集団で撮影するなら、できるだけ自分は簡単な仕事をしたい…」という気持ちがもたげます。でも、カメラなんかも経験次第なんですね。最初は「なんだよ、このややこしい機材はよう!」と半泣き状態にもなりますが(実際西洋絵画の撮影は、「撮影するまで」の準備段階が大変で、慣れなくて、シャッター押すに至るまでに最初は数時間かかったりします。苦笑)、一見あの人、しゃかしゃか簡単そうに写真を撮るな~って人も、こういう「うまくいかないよう!」を経験した結果であることは重々ご理解いただけると、学びにあせりがでないのかなと思ったりするんですよね。
ただ作品に手を入れる人、みたいな人がこうやってカメラの初歩程度の理解が必須ということにもしかしたら驚かれている方もいるかもですが、本当に文化財保存修復関係者というのは、様々に完璧とはいわずともある程度知識をもつ必要がありますので、いろんなものに好奇心が持てることって大事かなと思ったりします(^^)。
というわけで本日はここまで。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
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